「eMAXIS Slim」シリーズ合計残高10兆円突破、ノーロード・低コスト・インデックス投信の象徴
「eMAXIS Slim」シリーズ14本の合計純資産総額が2024年5月15日に10兆円を突破した。2017年2月27日に「先進国株式インデックス」、「国内株式(TOPIX)」、「先進国債券インデックス」、「国内債券インデックス」の4本でスタートした同シリーズは、合計純資産総額が100億円を超えるまでに約8カ月、165営業日を要したが、その後、ノーロード(販売時手数料が無料)・低コストのインデックスファンドを各社が品揃えして信託報酬の引き下げ競争が始まると「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」という商品コンセプトを忠実に守り通すことで人気を獲得。2021年4月12日にシリーズ合計残高が1兆円を突破。2023年7月18日に合計残高が5兆円を突破。そして、今回、2024年3月28日の合計残高9兆円突破から約1カ月半(32営業日)で残高を1兆円積み増してシリーズ合計残高10兆円に届いた。シリーズ設定から約7年3カ月での10兆円大台になった。
現在では、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が残高4兆5179億円、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が残高3兆3650億円と業界を代表する巨大ファンド2本をシリーズに持ち、シリーズ14本のファンドのうち純資産残高1000億円を超える大型ファンドが9本を数える。このシリーズが「業界最低水準の運用コストをめざす」というコンセプトをまげずに、競合社がより低い信託報酬水準のファンドを出すたびに、追随して信託報酬率の引き下げを実施していた2017年(合計残高100億円未満)から19年の頃(合計残高2000億円程度)に、まさか5年後にシリーズで10兆円を超える残高を獲得しようとは、誰も想像していなかったのではないだろうか。
そもそも日本の投資信託市場において株価指数に連動する「インデックス・ファンド」は、人気のあるカテゴリーではなかった。インデックスを上回る運用成績をめざすアクティブ・ファンドこそが、運用商品としては「正当」な商品と考えられ、「インデックス・ファンド」は商品の内容がわかりやすいだけの面白みのない商品として本流にはなれない商品群だった。ところが、2018年1月にスタートした「つみたてNISA」は、ノーロード・低コストのインデックス・ファンドを主力商品に置いた税制優遇制度だった。「長期・積立・分散」というコツコツ投資こそが資産形成に不可欠の要素として、インデックスファンドを使った「20年投資」を力強くアピールした。