オリックス逆転優勝の鍵を握る森脇監督のコメント力
プロの集団は、たぶんにメンタルで左右される。1年を長い目で見れば、戦力の厚い薄いや、ベンチの戦術、戦略が影響を及ぼし、1勝、2勝と積み重なっていくが、こういう終盤にきてグラウンドに出ている9人対9人の戦いで言えば、気持ちの戦いが占める割合が高くなる。そして選手は監督、コーチの新聞の掲載されるコメントに対して神経質になるものでもある。時には、その一言が、モチベーションを大きく左右させる。 名将、野村克也氏が、阪神監督時代に、ぼやき続けて、それが報道されることで選手の気持ちが離れていき、最下位に低迷したのが、その典型的な例(戦力不足も酷かったが)。また長嶋茂雄氏が、巨人の監督時代に中日との伝説の10・8決戦の前に「勝つ!勝つ!勝つ」とミーティングで暗示のようなポジティブな言葉をかけたのも一種の言葉の魔法だろう。 おそらくコーチとして長らく下積みを続けてきた森脇監督は、そういう繊細な選手心理の機微を理解した上でポジティブな“コメント力”を利用しているのだ。しかも、読書家で深慮深い男だから、言葉の選び方にもぬかりはない。森脇監督の“コメント力”は、ソフトバンクを追い抜くための選手を乗せてチームに一体感を生むための重要なツールである。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)