川口市に集まるクルド人は本当に難民なのか? 「僕自身がクルド人だが、トルコで迫害はない」
大学に進学するクルド人も少なくない
聞き取りや各種資料を総合すると、1980年代から90年代の“内戦”時代には、クルド人が差別、迫害されたという実態はあったようです。そのためクルド人の中には難民として外国に逃げる者もいた。その多くは欧米に流れ、ごく少数は日本にも来たようです。 しかし、2003年、エルドアン政権の誕生をきっかけに状況は変わりました。EUへの加盟を望んでいた政権は、EU人権基準の遵守が求められるため、クルド人に対する法的な差別をなくした。クルド人は人口約8500万人のうち20%ほどを占めますが、クルド系の政党があり、クルド人の国会議員がいて、大臣も高級官僚もいます。エルドアン現大統領の夫人はクルド系。兵役義務も他の国民と同じ最低6カ月間です。義務教育の国語ではトルコ語のみが教えられ、クルド語は対象外ですが、他の少数言語も同様の扱いです。公立の学校は大学まで無料で、大学に進学するクルド人も少なくありません。クルド人が難民不認定となり帰国したからといって、逮捕されたり死刑になることはなく、そもそもトルコに死刑制度はない。 アレヴィー派というクルドの中でも少数である民族については社会経済的な差別を受けることはあるようですが、これも迫害とまでいえるレベルではありません。
「トルコ国内でクルド人が迫害されているという事実はない」
ただし、非合法であるPKK(クルド労働者党)や、「ギュレン運動」という宗教社会運動に関わっている人々は監視や嫌がらせの対象となり得ます。ギュレン運動の関係者は2016年にクーデター未遂事件を起こし、弾圧の対象となって欧米諸国に逃れました。欧米諸国で難民認定されたトルコ(クルド)人は7万人以上いますが、多くはギュレン運動関係者でしょう。 ある国際機関の担当者はこう述べていました。 「トルコ国内でクルド人が迫害されているという事実はない」 大使館の担当者も、 「今のエルドアン政権はクルド人を迫害したり法的に差別するということはありません。ただし反政府武装組織であるPKKの関係者、著名だったり批判的だったりするジャーナリスト、クルド系の政治家については注目している。それ以外の一般のクルド人については、関心を持っていません」 日本のマスメディアが報じる「犠牲者観」に基づいたクルド人への見方とはだいぶ異なるのです。