どうやって「多品種少量・変動生産」を実現したか? パナソニック松本工場が車載機器で「世界的な成果」を挙げた理由
生産現場での“見える化”が重要
では具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。松本工場でまず実践されているのが生産現場での“見える化”です。 この実現のために採用したのがタイムスタンプの活用。粟澤氏は「リードタイム(発注から納品まですべての工程にかかる時間)やサイクルタイム(商品の製造にかかる時間)、中間在庫などの見える化につながり、どこがボトルネックになっているのかを把握しやすくなります。これをもとに、リードタイム削減に向けた取り組みを行っていく」というわけです。 また、2023年から導入した「後補充生産方式」も重要な役割を果たしています。これは、完成品倉庫の販売実績をもとに毎日8日先の1日分の生産計画を確定させるもので、急な減産があっても柔軟に生産調整ができるメリットがあります。一方で「生産開始まで15日かかっていたのが、材料の在庫次第ではあるが8日に短縮できる。この方式は顧客にとってもメリットが生まれる」(粟澤工場長)ということでした。 また、工場としては社会貢献の意味から、脱炭素化への取り組みを積極的に進めることが欠かせません。松本工場では毎年3%ずつ省エネ率を高める活動を行うと共に、2050年までに再生エネルギー率100%も目指すとのこと。すでにカーポートの屋根に太陽光パネルを組み込む活動を2024年7月から開始し、さらには2024年2月からはオフサイトPPA(Power Purchase Agreement)による電力供給をスタート。2025年度にはオンサイトPPA導入計画も進行中とのことでした。
「モノを作る前に人を作る」で土台づくり
そして、松本工場で特に重視しているのが、社員一人ひとりによる「土台づくり」への取り組みです。その中核となるのが「ひと繋がり改善活動」で、ここでは「大部屋、小部屋」と呼ぶ仕組みを導入。オフィス内の大部屋はガラス張りで外から見えるようにした上で、社員が誰でも入れるような環境とし、さらに小部屋では現場の困りごとを拾い出して全員で課題を解決。互いに助け合う風土を作り上げようというわけです。これによって、緊急事態の発生や、自然災害による被害に対しても独断即決ができる環境づくりにつながったのです。 この根底には、パナソニックの創業者である松下幸之助氏の「モノを作る前に人を作る」という言葉が息づいているとのこと。粟澤氏は「こうした中で一人ひとりが活躍できるような経営を実践し、イキイキワクワクできる松本工場を作り、それが日本のモノづくりへの貢献につながるよう心がけて参りたい」として、この日の説明を締めくくりました。
会田 肇