田家秀樹が語る、中島みゆきの名曲をカバーしたコンサートアルバム
いろいろなライブストーリーが歌縁にある
永遠の嘘をついてくれ / 曽我部恵一 歌っているのは曽我部恵一さん、サニーデイ・サービス。バンドとかなり違うんじゃないでしょうかね。歌詞カードに曽我部さんのコメントも載っているんですね。みゆきさんの曲は聴いていても最高ですが、歌っても最高なんです。拓郎さんに書いたこの曲も、歌ってみてさらに好きになりました。大きな声で歌えば歌うほど好きになっていきました。今度は夜の空き地に立って思い切り歌いたい。そういう歌いっぷりですね。みゆきさんのアルバムは1996年の『パラダイス・カフェ』に入っておりましたが、その前に拓郎さんに提供した曲ですね。2006年、拓郎さんのつま恋の野外コンサートでみゆきさんと拓郎さんが、これもみゆきさんはシークレットで登場しましたけれども、デュエットで歌いました。そのときの架け橋になったのが、『Singles』の監修もした瀬尾一三さんでありました。 「永遠の嘘をついてくれ」は2020年のラストツアー「結果オーライ」でも歌われておりました。それ以来のライブ、歌会。東京公演1月19日と21日は先日行われましたね。この後、大阪が待っていますからね。ライブの話は後ほどにしましょうね。「歌縁」の8曲目。これも僕涙ぐんじゃったんです。増田惠子さん「慕情」。 慕情 / 増田惠子 8曲目、増田惠子さん「慕情」。2017年のシングルですね。増田惠子さんは言うまでもなく、元ピンク・レディー。1981年に増田惠子、この名前でデビューしたときの曲が「すずめ」ですね。みゆきさんの詞曲。それも増田惠子さんの希望で中島みゆきさんに書いてほしいということで依頼された、そんな曲だったんですね。増田惠子さんのコメント、これも素晴らしいですね。「慕情」について、「戻すことのできない時への後悔と失った大切な人への動向が私の胸を突き刺したのです。この歌を歌うのが夢だった」というふうにステージでも言われておりました。なぜこの人がこの曲を歌いたいと思い、こうやって歌っているのかということが歌の端々から伝わってくる。この曲は特にそうでしたね。ピンク・レディーの増田惠子さんということも全部含んだ、彼女の音楽人生を自分でどんなふうに受け止めているか、どんなふうに振り返っているかというのをこの曲に託している。これは歌というよりも、増田惠子さんの人生を見ているみたいな気がしたんですね。彼女は今回の出演者中の最年長なんです。 もう一度という言葉の実感は、みゆきさんご本人とは違う意味の重みがありました。これも2020年の「ラストツアー」のことになるのですが、本編最後に「慕情」と「誕生」が歌われたのですが、“もう一度”という言葉が共通している曲だったんですね。そのもう一度ということでラストツアーを終えて、今回のツアーになっているわけです。そういういろいろな出演者の人生が託されている、万感の想いが聴けるライブの大トリをこの人が締めてくれました。德永英明さん「時代」。 時代 / 德永英明 今日最後の曲、そしてライブの最後の曲でもありました。德永英明さんの「時代」ですね。それまでの出演者の方の歌がとても色彩感、情感豊かでそれぞれの色がはっきりしていたんですね。でも、この德永さんのハスキーボイスがそういういろいろな感情の起伏みたいなものをスーッとモノクロに画面を変えていってくれているような感じがしたんです。德永英明さんは大ヒットカバーシリーズ『VOCALIST』という勲章があるわけですけれども、ご自分でシリーズの原点がこの「時代」だというふうに話されていますね。歌詞カードにも載っております。プロデューサーの瀬尾さんにも久しぶりにお会いできてうれしかったですというコメントも載ってました。德永さんのヒット曲の初期の頃は、瀬尾さんがプロデュースでしたからね。そういう瀬尾さんも含めた、いろいろなライブストーリーが歌縁にあると思っていただけると嬉しい。収録されている曲も9曲なので、ライブの全貌というところまではいかないかもしれないのですが、こういうライブがあったらぜひ足をお運びいただいて、みゆきさんの歌がどういうものなのかおわかりいただけたりするのではないかと思ったりもしました。 今流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。 『Singles(リマスター)』は瀬尾さんが全曲を語ってくださったのですが、瀬尾さん今回のライブで、ステージに立っていましたよ。番組の中で瀬尾さんが今回のライブをこんなふうになるかもしれないとおっしゃっていたことが3つありました。1つはすごいよ、もう1つは1回のライブとは思えない内容なんだ、もう1つは絶対泣くよ。その言葉通りでしたね。どこでどんなふうに泣いたかとか、そういう内容に関しては当然触れませんが、やっぱりそういうライブでした。今までに見たことがないみゆきさんのステージでしたね。なぜ歌会という、夜会とか一会とか会がつくライブのシリーズがまた新しく始まったわけですが、夜会と歌会との関係というのも、あ、そういうことかと思ったりもしました。 ラストツアーの後ですから、今までと違う新しいこれから先の自分の姿、自分が歌いたい歌、これからやろうとしているライブ。それが形になっているんだろうなとは思ってはいたのですが、こんなにすごかったかと想いました。これ以上はご自分の耳と目でお確かめいただけるとと思います。「歌会VOL.1」は1月2月が東京で、3月と4月が東京と大阪で5月が東京というスケジュールですね。新しい中島みゆき、ぜひご自分の目と耳でお確かめください。 <INFORMATION> 田家秀樹 1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。 「J-POP LEGEND CAFE」 月 21:00-22:00 音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストにスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。 OFFICIAL WEBSITE : OFFICIAL Twitter :@fmcocolo765 OFFICIAL Facebook : @FMCOCOLO radikoなら、パソコン・スマートフォンでFM COCOLOが無料でクリアに聴けます! →
Rolling Stone Japan 編集部