【高校野球ベストシーン’23・富山編】攻守連発で甲子園のファンの心をつかんだ富山商ナイン、今夏たった1度のほころびに泣く
2024年が幕を開けた。昨年、高校球界でもさまざまな印象的な出来事があった。都道府県ごとにベストシーンを思い出してみよう。 【一覧】選手権大分大会準決勝 鳥栖工vs富山商 スタメン 【全国選手権甲子園大会1回戦・鳥栖工vs.富山商】 昨年夏の甲子園で、一番心に残ったゲームがあった。1回戦の鳥栖工(佐賀)と富山商(富山)の試合。延長12回タイブレークの末に、鳥栖工が3対2でサヨナラ勝ちを収めた。この試合で印象に残ったのは、富山商の守備だった。 富山商は夏の富山大会を無失策で勝ち上がって、甲子園に乗り込んでいた。甲子園の初戦となったこの試合でも、内外野の守備陣が鍛えられたプレーを随所に披露していた。 1対1の緊迫した展開で迎えた7回裏、二塁ベース寄りのゴロを処理した二塁手の白木 球二内野手(3年)が一塁への送球を無理と判断すると、グラブトスで遊撃手の竹田 哩久内野手(3年)へ渡して一塁でアウトを奪う、プロ顔負けのスーパープレーを披露した。 延長11回裏には、抜ければサヨナラ負けとなる右翼後方の大飛球を、途中出場の背番号10、秋田 幹太外野手(3年)がジャンプ一番好捕する「ザ・キャッチ」を披露するなど、甲子園の観客を守備で沸かせていた。 先発した上田 海翔投手(3年)も、1対1で迎えた10回裏の無死満塁の大ピンチで、スクイズを試みた投手前へのゴロを冷静に捕手へグラブトスして併殺を奪うなど、ピッチングだけでない9人目の野手として好フィールディングを見せていた。 このまま無失策でいくのかと思われたが、2対2で迎えた延長12回裏に悪夢が待っていた。鳥栖工の攻撃、無死一、二塁から三塁線への絶妙なバントの処理をした上田が、一塁へ悪送球。わずかに手元が狂ったのかワンバウンドになった。その間に、二塁走者がホームにかえってサヨナラ負け…。 この夏、最初で最後となった失策で、惜しくも敗れた富山商ナイン。161球を投じたエース上田の好投と鉄壁の守備は、甲子園のファンの心に焼き付いたに違いなかった。