貧しい日本、豊かな中国に買い負ければ「食糧安全保障問題」に!?…貿易自由化について経済評論家がわかりやすく解説
食糧安全保障より心配なのは、むしろ…
食糧安全保障を心配する人がいますが、筆者はあまり気にしていません。食料輸出国は比較的日本と仲のいい国が多く、輸送ルートもとくに問題はないので、食料が輸入できなくなることは考えにくいからです。 「中国人消費者が豊かになり、中国が食料を高値で輸入するので日本が買い負ける事例が増えている」ということを懸念する人がいますが、それは単に中国の経済成長率が日本より高いから日本が相対的に貧しくなっている、ということであって、食料安全保障の問題とは切り離して考えるべきでしょう。 筆者が懸念しているのは、食料の輸入ではなく、石油の輸入が止まることです。トラクターが動かなければ農業生産は激減しますし、農村から都会へ食料を運ぶこともむずかしくなります。そうならないことを祈るしかできませんが。
【初心者向け】分業のメリットをわかりやすく解説
以下では、隣人と家事を分担するという事例で、分業のメリットを経済初心者向けに説明しておきましょう。 筆者は料理が得意で、1時間に2皿の料理を作り、2時間かけて2皿を洗っています。隣人は皿洗いが得意で1時間に2枚の皿を洗いますが、料理は2時間かけて2皿作れるだけです。2人とも、3時間働いて2皿の料理を食べているわけです。 2人が分業すると、筆者は3時間かけて6皿の料理を作り、隣人は3時間かけて6枚の皿を洗うようになりますから、2人とも「働く時間は3時間のままだが、食べる料理は3皿に増える」ことになります。これが分業のメリットです。 筆者の隣人が筆者より有能であったとしても、隣人も分業でメリットを得られます。筆者は5時間で3皿の料理を作り、3時間で3枚の皿を洗っています。隣人は2時間で4皿の料理をつくり、2時間で4枚の皿を洗っています。分業すると、筆者は8時間で8枚の皿を洗い、隣人は4時間で8皿の料理を作ります。筆者も隣人も働く時間は変わらないのに、両者合計の料理は7皿から8皿に増えます。あとは、増えた1皿をどう分けるかの交渉が待っているだけです。 国際分業の場合には、交換ではなく輸出入が行われるわけですから、交換比率を交渉する必要はなく、為替レートで調整されることになる、という違いはありますね。 今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。 筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義