次世代太陽電池「ペロブスカイト」量産化へ…積水化学がシャープ堺工場の一部取得、拠点に
積水化学工業は26日、次世代の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の量産拠点として、シャープの堺工場(堺市)の一部を取得すると発表した。ペロブスカイトは市場拡大が見込まれ、政府も普及を後押しする。シャープは重荷だった堺工場の売却にめどをつけ、再成長に弾みをつけたい考えだ。(仁木翔大、松本裕平) 【図表】シャープ堺工場を巡る主な動き
積水化学が250億円で工場敷地内にあるシャープの太陽電池の生産棟など(延べ床面積約22万平方メートル)を取得し、ペロブスカイト太陽電池の生産設備を新設する。総投資額は3145億円で、政府が半額を補助する。2027年に年10万キロ・ワット分、30年までに原発1基分に相当する年100万キロ・ワット分の太陽電池の生産能力を整備する計画だ。
来年1月に日本政策投資銀行と合弁で新会社「積水ソーラーフィルム」を設立し、新工場での生産は27年4月開始を見込む。
ペロブスカイトは薄くて軽く、曲げられるといった特性から、建物の壁など幅広い場所に設置できる。
積水化学は、自社の液晶向け封止材の技術を応用して開発で先行している。耐久年数や発電効率の技術が世界トップクラスとされ、来春開幕する大阪・関西万博の会場バスターミナルの屋根に設置される。加藤敬太社長は26日の記者会見で「太陽電池の増加には都市部への設置が鍵となる。製品の普及で電力の地産地消につなげ、社会課題の解決に取り組みたい」と述べた。
負の遺産売却収益化にめど
シャープは、近年の業績不振の主因となってきた堺工場の売却が課題となっていた。テレビ向けの大型液晶パネルと太陽電池を生産していたが、業績悪化を受け今年8月までに共に生産を終えた。
今月、ソフトバンクに1000億円で堺工場の敷地の約6割と液晶パネルの生産棟などを売却すると発表し、KDDIとも交渉が進む。両社はいずれもAI(人工知能)データセンターへの転用を計画している。
積水化学が取得する太陽電池の生産棟にはシャープ本社が入り、現在も経営部門など約1000人が勤務する。売却に伴い、堺から本社を移転する可能性もある。“負の遺産”の収益化に一定のめどがつき、今後は家電など採算性の高い「ブランド事業」での再成長を目指す。中小型パネルなど残る不採算事業の構造改革が次の課題となりそうだ。