「レゲエ校歌」で話題の和歌山南陵、廃校寸前から再建への道 バスケ部はウインターカップに出場
荒れ果てていた寮も、着実に改善に向かっている。水漏れを修理し、掃除中に発見したポリッシャーを使って床を磨き上げた。夏場には和歌山南陵のOBが志願して大掃除にやってきてくれた。業者への支払いができるようになったため、寮の食事も改善されている。雑草が伸び放題だったグラウンドも野球部部長の小林祐哉が地道に芝刈りをして回り、ようやく野球場らしくなってきた。 旧経営陣はメディアが学校内に立ち入ることすらシャットアウトしていたというが、甲斐の理事長就任後は「いい部分も悪い部分もすべて隠さずオープンにする」という方針に180度転換した。甲斐は噛み締めるように言った。 「一歩一歩、前に進んでいくしかないんです。ウチの校歌の歌詞のように」 【全国大会直前で非常事態発生】 こうして難局を乗り越え、なんとか生徒募集停止の措置命令が解けた。甲斐は「史上初の快挙です」と笑顔を見せつつ、早くも次のフェーズを見据えている。来年度の入試は2月に迫っており、生徒募集をするにはあまりに時間がなさすぎるのだ。 既存の野球部、バスケットボール部、吹奏楽部の生徒を募集しつつ、剣道部、サッカー部、バレーボール部、ラグビー部といった運動部も立ち上げる構想があるという。 教員の古川は、和歌山南陵が置かれた現状を独特な言葉で表現した。 「富士山を登る前に、とりあえず樹海を抜けたような感じですね。どこを見てもうっそうとした木々に囲まれていたのが、ようやく山の全容が見えて登山を始められる段階にきました」 経営陣も一新しているだけに、当初は学校名を変える方針だった。だが、甲斐にとって想定外だったのは、「レゲエ校歌」が想像以上にメディアに取り上げられ、話題になったことだった。 「とりあえず今年のために間に合わせでつくった校歌でしたが、あれだけ話題になってしまって......。多くの方から『学校名を変えないで』という言葉もいただきました。いつか『あんなボロボロの学校が、ここまでよくなったんだよ』と言われる学校にしていくために、和歌山南陵の名前はそのままにしたいと考えています」
新生・和歌山南陵の名前を世間に知らしめるイベントも間近に迫っている。部員わずか6人のバスケットボール部が夏のインターハイに続き、冬の全国大会・ウインターカップへの出場を決めたのだ。12月23日には長崎工業との初戦が組まれている。 ところが、大舞台を前に和歌山南陵バスケ部は非常事態に見舞われている。部員が1名欠け、なんと5選手でウインターカップを戦わなければならないのだ。 つづく>>
菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro