だから東大生が「外資系コンサル会社」に流れていく…国家公務員の給与増では"官僚離れ"は止められないワケ
■税収が増えているなら国民に還元すべき もちろん、財務省は国の借金が1300兆円を超えたと大騒ぎするが、では歳入が増えた分を借金返済に回すかというとそういう議論にはならず、増税が必要だと言い続けている。 国民からすれば、国の借金を増やし続けているキャリアの幹部官僚にこそ、財政悪化の責任を負わせ、ボーナスカットでもしたいところだが、まったくその気はない。 税収がこれだけ増えているのも、物価が上昇しているからで、消費税は同じ物を買っても、価格が上がれば負担する税金額は増える。所得があまり増えない中で、物価上昇と税金増によって国民の可処分所得は大きく減り、生活は困窮の度合いを深めている。 本来ならば、これだけ税収が増えている分の一部を国民に還元すべきで、補助金をばら撒くよりも、消費税などの減税をする方が公平だし、消費を喚起する効果もある。国民民主党が「手取りを増やす」を公約に掲げて躍進した背景にも、可処分所得が減っている国民の切実な声があると見るべきだろう。ようやく103万円の年収の壁は引き上げられることになったが、その過程で、財源はどうするんだといった声が財務省を代弁する自民党議員から繰り返されていた。霞が関の幹部官僚は、国民に減税するよりも、自らの給与増が「当たり前」と思っているのだろうか。 ■予算を効率的に使った課長のボーナスを増やせばいい もちろん、重要な役割を担って働いている国家公務員の給与を引き上げていくことは必要だろう。だが、一方で、この財政赤字をどうしていくべきなのか。 簡単なのは、予算を効率的に使って残した課長にボーナスを積み増すことだろう。あるいは、不要な予算を削り、人を減らした課長をきちんと評価する仕組みにすることだ。今は仕事を新たに作って予算を上積みして取ってくる課長が優秀な課長とされ、不要な仕事をやめて、人を減らすような課長はまったく評価されない。つまり、国家予算をどんどん膨らませていくことが優秀な霞が関官僚の仕事の仕方になっている。当然、予算が膨らめば、権限も増える。 一方、国会の予算審議で、厳しく査定しなければならないはずの国会議員にも、予算を削るインセンティブはない。無駄を省くよう求めるよりも、地元に橋をかけたり、道路を作ることに一生懸命な議員の方が、選挙で強かったりする。つまり、官僚も政治家も、国赤字を減らそうと考える人はいないというのが現実だ。 これを大転換するには、給与やボーナスの仕組み、官僚の評価制度を根本から見直すべきだろう。 ---------- 磯山 友幸(いそやま・ともゆき) 経済ジャーナリスト 千葉商科大学教授。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。 ----------
経済ジャーナリスト 磯山 友幸