<暮らしの中の科学>雨が降ると感じるあの「におい」は2種類あった その発生源は?
ポツポツと雨が降り始めた時や、シトシトと降り続く時、独特の「におい」を感じる人も少なくないはず。子ども時代を思い出すような、どこか懐かしいにおいだ。なぜ、ただの水であるはずの雨ににおいがあるのだろうか。あのにおいはどこから来るのか。 アニメ映画「天気の子」の気象監修を務めた気象庁気象研究所主任研究官の荒木健太郎さんによると、このにおいは、主に2種類に大別できるという。一つは「ペトリコール」、もう一つは「ゲオスミン」と呼ばれている。 「ペトリコールは『土っぽい』と表現されることが多いのではないでしょうか。しばらく雨が降らない中、久しぶりに雨が降った時に感じるにおいです」と荒木さんは説明する。ギリシャ語で「石のエッセンス」という意味のペトリコール。乾燥した土や石の表面にくっついた植物の油が、降雨によって空気中に放出されて発生するという。 ペトリコールが「降り始め」のにおいだとすると、ゲオスミンは、降っている最中や、雨上がりに感じられる。ギリシャ語で「大地のにおい」という意味だ。土の中の細菌が作る有機化合物の名称でもあり、降雨によって空気中に放出されてにおう。荒木さんは「どちらかというと生臭く、カビ臭いように思います」と語る。 ペトリコールとゲオスミンのどちらが強くにおうのか。荒木さんによると、季節ごとの特色もあるようだ。前線の停滞によって長雨となることが多い梅雨や秋雨のころには、ゲオスミンがより強く感じられる。一方、急に局所的で強い雨が降ることが多い夏場は、ペトリコールの方が勝るケースが多いとみられる。 雨のにおいは、植物や石、土の中の微生物によって作られていた。では同じように雨が降っても、いる場所の環境によって違いが出るのだろうか。荒木さんは「地域差はあると思います」とした上で、こう話す。 「昔は雨のにおいを感じたけれど、都会に来てからはあまり感じなくなったという声も聞きます。ペトリコールもゲオスミンも、発生するには畑などの土が必要です。都心にいるよりも、郊外などの環境の方がにおいを感じやすいのかもしれません」【大野友嘉子】