Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

（ブルームバーグ）： 農林中央金庫が米ドル建て債券の発行を準備していることが分かった。外国債券投資に関連して今期に約１兆5000億円の純損失を計上する見通しを６月に発表して以降、初のドル債となる。

事情に詳しい関係者によると、農林中金は５年物グリーンボンド（環境債）の発行に向けて主幹事証券を指名し、７日からアジアと欧州、米国で投資家向け電話会議を開催する予定だ。ブルームバーグのデータによると、同金庫による前回のドル債発行は2023年３月だった。

今回は米連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）が利下げに動き、９月の雇用統計も米国景気の底堅さを裏付けたことで世界的に信用スプレッド（上乗せ金利）が引き締まりやすい環境での起債となる。

農林中金のドル建て債のスプレッドは、財務基盤強化に向けて資本増強を実施する方針を５月に明らかにした後に急拡大した。ブルームバーグのデータによると、28年に満期を迎えるドル債のスプレッドは５月中旬の75ベーシスポイント（ｂｐ、１ｂｐ＝0.01％）から一時140ｂｐ程度まで拡大した。

ただ、同債のスプレッドは７日に121ｂｐに縮小。ブルームバーグ指数によれば、米国の高格付け債のスプレッドは４日に約３年ぶり低水準まで縮小している。

農林中金の広報担当者は新たなドル債の発行についてコメントを控えた。

農林中金は世界的な金利の高止まりで採算が悪化した米欧の国債10兆円規模を売却することで、巨額の赤字に陥る見通しとなった。これを受けて発足した農林水産省の有識者検証会は９月に初会合を開き、市場運用体制などに関して検証を始めた。

資本増強について農林中金は９月30日、永久劣後ローン7169億円を償還し、中核資本に算入できる後配出資で7360億円の増資を実施したと発表。８月１日に決議した期限付き劣後ローンの借り入れについても対応を進めているとした。

ムーディーズ・ジャパンは９月のリポートで、増資により中核的自己資本（ＣＥＴ１）比率は改善し、想定される損失の影響を軽減するバッファーになるとの見方を示した。