ジョージア新大統領が就任、前任者は退任拒否
旧ソヴィエト連邦のジョージアで29日、親ロ派与党「ジョージアの夢」の支援を受ける元プロサッカー選手のミハイル・カヴェラシヴィリ氏(53)が新大統領に就任した。首都トビリシでは多くの市民が抗議した。 今年10月の総選挙で勝利した「ジョージアの夢」は、欧州連合(EU)加盟申請を停止。これに多くの市民が反対し、政情は不安定になっている。 サロメ・ズラビシヴィリ前大統領は29日、退任を拒否。「正当な大統領は自分だけ」だと主張した。 ズラビシヴィリ氏は大統領官邸の前に集まった群衆を前に、自分は官邸を離れるものの、新大統領に正当性はないと批判した。 「この建物に象徴性があったのは、正当な大統領がここにいた間だけだ」と、ズラビシヴィリ氏は述べた。 カヴェラシヴィリ氏は、大統領官邸の近くにある議会議事堂で宣誓就任式に臨んだ。家族のほか、イラクリ・コバヒゼ首相が出席した。 就任した新大統領は、ジョージアの「伝統、価値観、国民としてのアイデンティティー、家族や信仰の神聖さ」をたたえた。 「ジョージア国民にとって常に、平和が主な目標と重要な価値の一つだった。国土と伝統を守るために苦闘を繰り返したこの国の歴史が、そのことをはっきりと示している」と、新大統領は述べた。 ジョージア政界の主要野党4党はカヴェラシヴィリ氏を大統領として認めず、議会をボイコットしている。 「ジョージアの夢」の元議員だったカヴェラシヴィリ氏は今月、議会の投票で大統領に選ばれた。ほかに候補者はなく、ズラビシヴィリ前大統領はこの経緯を「茶番」と呼んでいる。 「ジョージアの夢」は近年、権威主義的な傾向を強めている。報道機関、外国から資金援助を受ける非政府団体、性的少数者コミュニティーを抑圧するロシア式の法律を次々と成立させている。 ロシアが2022年2月にウクライナ全面侵攻を開始した際には、西側諸国の制裁に参加せず、西側を「世界戦争党」と嘲笑した。 他方、ジョージア国民の圧倒的多数はEU加盟を支持している。ジョージア憲法にはEU加盟が国の目標として明記されている。 しかし今年11月に「ジョージアの夢」は、EU加盟の取り組みを2028年まで延期すると発表。これに反発した国民らが数日にわたり、首都トビリシなど各地で抗議デモを繰り広げ、一部で機動隊が催涙スプレーや水を放つなどした。 28日には大統領就任式に先立ち、ジョージアとEUの旗を手にした人たちが首都で集まり、数キロにもなる人間の鎖を作った。 参加者の一人はAP通信に対して、「この小さい国をなんとかしてロシア帝国の爪から引きはがすため、家族全員とこうして道に立っている」と話した。 アメリカ政府は27日、「ジョージアの夢」を創設し、ジョージアの最高実力者と目されている大富豪ビジナ・イワニシヴィリ元首相を制裁対象に指定すると発表した。 ジョージアは議会制民主主義の国で、大統領が国家元首。首相は議会の議長を務める。 ズラビシヴィリ氏が2018年に大統領となった際には、「ジョージアの夢」の支援を受けていたものの、同党が過半数を得た今年10月の議会選挙について「ロシアの特別工作」と非難し、議事堂前でEU加盟を求めるデモ隊に同調した。 (英語記事 Georgia's outgoing president refuses to quit as successor sworn in)
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