「日本との関係を重視する頼清徳総統のメッセージだと思います」台湾重要ポストに“日本人”が異例の就任 頼総統と10年来の友人関係にある野崎孝男さん
10月10日、台湾の建国記念日にあたる「双十節」の式典が行われた。 式典の会場となった総統府前には多くの市民が集まったほか、関係者席には前総統の蔡英文氏の姿もあった。 【画像】台湾の政務顧問に任命された野崎孝男さん 式典で一番の注目を集めたのは、中国が「台湾独立派」とする頼清徳総統の演説だ。今年5月に総統に就任した頼清徳総統が初めて「双十節」の式典で行う演説で、中国との関係や対中政策についてどのような言葉で語るのか、台湾だけでなく世界中が注目した。
「中華人民共和国に台湾を代表する権利はない」
現地時間の午前10時半過ぎから始まった演説で頼総統は「中華人民共和国に台湾を代表する権利はない」と強調した。そして、中国の統一圧力を念頭に「総統としての使命は国家の存続と発展を維持し、2300万人の台湾の人々を団結させ、国家の主権を守ることであり、侵犯や併合を許さない」とも強調し「中国と台湾は別の存在」という考えを改めて示した。 その頼総統の姿を関係者席から見守る1人の日本人がいた。台湾在住の野崎孝男さん。 頼総統とは10年来の友人関係にあり、2024年8月には日本の内閣にあたる台湾行政院の政務顧問に任命された人物だ。政務顧問とは頼政権に直接、助言や提言をする重要なポストで、ここに外国人が任命されるのは異例と言える。「日台関係の懸け橋になりたい」と語る野崎さんに政務顧問に任命された経緯と頼総統との関係、そして中国から圧力を受ける台湾と日本との関係について語ってもらった。 ――政務顧問に任命された際、どのように感じた? 「頼総統はこんなにも自分のことを信頼してくれていたのだと本当に驚きと共に嬉しさがありました。一方で、責任の重さも感じました。私と頼総統の交流は2016年頃から始まり、特に絆が深まったのは2016年2月に発生した台湾南部の大震災が関係しています」
不眠不休で指揮を取り続けた頼氏
「私は2008年から台湾に留学生として奨学金で大学院に通っていました。奨学金の原資は台湾の税金です。私はこの税金によって台湾でチャンスをもらい、その後、台南市で日本食の飲食店を立ち上げ成功しました。実業家として成功できたのは台湾がチャンスを与えてくれたからです。私はこの台湾に対して恩返しをしたいと常々思っていました。そういった思いがあったので、台湾で大きな自然災害が起きた際には食事を提供するボランティア活動を行っていました」 「2016年2月に台湾南部で大震災が発生した時も現地で救援活動に従事するスタッフに温かい食事などを提供しました。そこで当時、台南市長だった頼氏が不眠不休で陣頭指揮を取り続ける姿を見て感銘を受け、その時から私は頼氏を支え続けたいと思うようになりました」 「その後、私が現地で食事を提供するボランティア活動を続ける中で、頼氏から信頼を得ることになり、2016年8月には頼氏から台南市の外交顧問に任命されました。台湾の地方自治体で日本人はもちろん、外国人が顧問になるのは初めてのことでした」 「日本人は台湾から友好的に見られることが多いですが、それでも日本人をこのようなポストに就けるのは頼氏にとってもリスクはあったと思います」 ――地方自治体の外交顧問から、なぜ台湾の政務顧問に任命された? 「これまで台南市で日本の地方自治体と台南市を繋ぐという事などをやってきました。また台湾の企業が日本に進出する際の現地リスクなどの助言も行ってきました。こういった活動をさらに広げ、台湾全土でもやっていきたいと考えていたところ、5月に台湾の総統に就任した頼氏が推薦をする形で、2024年8月から政務顧問のポストに就くことになりました。これは頼総統が日本との関係を重視しているというメッセージだと思います」