袴田事件から考えるメディア・市民のあり方…谷口真由美が提言
この事件では、威圧的、侮辱的な言動を一方的に続けた取り調べがあり、検察組織の姿勢を厳しく批判されました。取り調べの可視化はなかなか進まなくて、密室で行われて、時に暴力的に、時に取り調べのときに「カツ丼喰うか」みたいな場面をドラマで見たことがあると思うんですが、あれも自白を促す一つですよね。 狭山事件の石川さんも「罪を認めたら懲役10年ぐらいで帰ってこれるから認めとけや」みたいな感じで認めさせられて、結局無期懲役の判決が出ているわけですよ。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事事件の原則は、実はローマ法の時代、紀元前の400年以上前から言われていますが、実際には守られてきていません。 ■EUではもうやっていない手錠腰縄 日本の刑事事件で他に問題なのは手錠腰縄ですね。刑事被告人は、法廷に入る時まで手錠と腰縄をつけられているんですが、手錠って前でするので手のひらが内側になるんです。そうすると歩くときにどうしても前かがみになってしまうんですね。 だから昔の市中引き回しみたいな感じに見えると思うんです。罪を犯していなくても屈んでしまうので「悪いことして申し訳ありません」みたいな態度に見えるんです。EUとかはもうやらないんですよ、法廷での手錠・腰縄なんて。裁判をするときは外すんですよ。 刑事被疑者であったとしても、人権はあるし、ましてや冤罪事件だった場合、その人を「明らかに犯人である」という姿を見せてしまうんですね。そうやって私達が目の印象で「手錠・腰縄をされている人間は悪い人間だ」みたいに思ってしまうという問題があります。「何となく悪いやつ」というイメージを持つことによって、世論も有罪判決に持っていくみたいなところがあって、そういうことが非常に怖いのです。 ■メディアに課せられた姿勢 私も今、メディアを通じて話しているので自戒を込めて言うと、やっぱりメディアがそこに一緒になって大きく事件を報じているという問題があると思います。昔で言えば「夜討ち朝駆け」と言われて「スクープ取ってこい」ということを、ものすごく強要された時代がメディアの中にもありました。最近はそうでもないということは聞いていますけれども。