西友が北海道・九州から撤退…道内9店舗を手に入れたイオン北海道の狙い
【企業深層研究】西友(上) 西友(東京都、非上場)は北海道と九州の店舗を売却する。 ドラッグストア最大手「ウエルシア」社長が不倫報道で辞任…松本忠久氏の叩き上げ人生と経営手腕 北海道では、道内の全9店舗をイオン北海道に170億円で売る。10月以降、イオン系列の店として再出発する。イオンやマックスバリュなどに看板を掛け替える。テナント契約や従業員の雇用は引き継ぐ方針。道内で西友の店舗はなくなる。 西友が北海道に進出したのは1973年。札幌市を中心に、一時は岩見沢市や滝川市にも店舗を構え、ピーク時には11店舗になった。その後、経営不振から撤退が相次ぎ、現在は札幌市内の9店舗だけ。売上高は261億円だ。 道内経済の一番大きな問題は人口の減少だ。弱いチェーン店から倒れていくため、地域の一番店の座を守ることが非常に重要になる。 西友の店舗を手に入れたイオン北海道の狙いもそこにある。 2024年2月、イトーヨーカ堂が北海道からの撤退を表明した。つまり北海道の道外の大手スーパーはイオンだけとなる。 他方、九州では、西友が福岡県、佐賀県などで運営している食品スーパー、サニーの67店舗と、長崎県の西友2店舗を、中国・四国・九州が地盤のイズミ(広島市、東証プライム上場)の子会社ゆめマート熊本(熊本市)に8月1日付で譲渡する。売却額は非公表。イズミは、パート従業員を含む3800人の雇用は維持する。 イズミの開示資料によると西友の九州事業の売上高は969億円(22年12月期)だった。 食品スーパーのサニーは福岡市の百貨店「岩田屋」(現・岩田屋三越)と伊藤忠商事が共同で設立。1963年、熊本市に1号店を開店した。店舗網を拡大していたが、百貨店事業が不振に陥っていた岩田屋は再建策の一環として2001年に保有するサニー全株式を西友に売却した。 広島で創業したイズミは1995年に九州へ進出し、福岡、佐賀など5県で大型ショッピングモール「ゆめタウン」や、「ゆめマート」など84店を展開している。イズミが運営する190店(2023年2月末、連結)のうち九州地区が半数を占める。 イズミは2025年度までの中期経営計画で福岡県を重点エリアの一つと位置づけ、M&A(合併・買収)を進めている。1月には大分県内の食品スーパー、サンライフの買収を発表。西友からサニーなど店舗を譲り受けると、九州で160店体制になる。 イズミのライバルのイオン九州は24年度から3年間の中期経営計画で、福岡県で小型スーパーなど110店を出店する。同県の店舗数は200店規模となる。 イオンは大型ショッピングモール「イオンモール」を核に小型スーパーを配置している。対するイズミは大型ショッピングモール「ゆめタウン」を軸にサニーを配置し対抗することになる。 イズミのバックには、セブン&アイ・ホールディングスが付いている。イズミの創業者、故・山西義政氏(20年に97歳で死去)と、イトーヨーカ堂の創業者、故・伊藤雅俊氏(23年に98歳で死去)は同じ釜の飯を食った仲間だ。山西氏の自著「ゆめタウンの男」(プレジデント社)の表紙に、戦友の伊藤氏が推薦文を寄稿している。 イズミはセブン&アイと業務提携し、セブン&アイグループとして商品開発、店舗展開を行っている。 福岡を舞台にイオンとイズミ=セブン&アイがガチンコ勝負を繰り広げることになる。 西友はなぜ、北海道と九州から撤退するのか。=つづく (有森隆/経済ジャーナリスト)