AIとアルゴリズムでは及ばない“投資”で勝つ秘訣 投資に関してAIは人間の認知能力に追いついてない
後藤:現在、投資の世界でもAIと言いますか、「アルゴリズム投資」が広まっています。宇根さんはこのように機械を相手にしなければならない市場の中で、どのように独自色を打ち出しているのでしょうか。 宇根:普段、我々が主に取り扱っているのは中小型株です。日本には4000社ほど上場企業があって、証券会社のリポートは主要なだいたい2割3割程度しかカバーされてないんですよね。 後藤:全体から見て、800社程度しかちゃんと見られていないということですか。
■事業会社との面談を重視 宇根:そうです。3000社ぐらいはもう野放しになっていて、企業の正しい価値が算定されてない状況です。しっかりとお話を伺えば、「この会社は伸びるかもしれない」「この会社はちょっと伸びづらそうだな」と会社の全容が見えてくることがあるんですね。だから、愚直に年間2000回から3000回ほど事業会社と面談させていただいて、事業モデルや業界のトレンドを理解していく方針を取っています。
後藤:かなり地道な活動ですね。 宇根:今後、上がってきそうな銘柄をできるだけ多く見つけて、できるだけたくさんの投資アイデアに分散投資していったら、もしかしたら儲けられるかもしれない。実際にそういったファンドで、なかなか表には出てこないけれども儲け続けているファンドさんもいらっしゃると感じたので、実践してみることが、私たち独自の一つのエッジの出し方なのかなと思っています。 後藤:アルゴリズムやAIとは真逆の原始的な世界ですね。
宇根:そうですね、おっしゃる通りです。言い換えれば、人間の認知能力は素晴らしくて、まだまだAIは追いついてないですね。この間、AIに「債券は今買いですか?」と聞いてみたら「債券はリスクがありますので……」と、教科書のようなことしか返ってきませんでした。 それに対して、株でも投資をしようかなと思う時に、会社説明会に行った時の経営者の顔色や声のトーン、出席してる人たちの人数や顔色までは現段階ではAIで読み取ることはできません。現場に行った人間の情報処理能力とそこから感じる熱量みたいなものから生まれてくる投資アイデアはまだまだ差別化要因になると考えています。