“フォトゴルファー”阿部未悠が石川遼とスイング改造談義/もし女子プロが男子プロの撮影をしたら(後編)
石川 ボクは振り遅れもアリだと思っています。タイミングが遅れて右にボールが出てもフェースが開いていなければ戻ってくるので。振り遅れは悪いことですっていうレッスンがすごく多いですが、それはフェースが開いているからです。 阿部 練習ラウンドで、振り遅れる感じのシャドースイングをしていましたね。あれも敢えて振り遅れを作っていたということですか。 石川 そう。振り遅れたいと思っています。 阿部 ドローヒッターですもんね。
「つかまる」と「つかまらない」の足し引き
石川 ボクの場合、つかまる要素、つかまらない要素を足し引きしてドローを打っているんです。ウィークグリップで左に行きにくく(つかまりにくく)して、マックスで掌屈入れて(つかまりやすくして)、レイドオフ目のシャフトの状態を作って振り遅れ気味にクラブを下ろす(つかまりにくくする)。飛ぶのがいいとなると球がつかまるのが一番飛ぶんで、みんなつかまえたくなるんですよね。超クローズスタンスにして思いっきり左に引っ張れば絶対つかまるんですけど、じゃあそれでトーナメントを戦えるのかっていうとそうはいかない。「飛ばない=曲がる確率は減る」から、やっぱ飛ばない人の方がフェアウェイキープ率は高い。飛ばなくなったとしても、まずは正確性を上げて、その上で違うところで飛ばすのがいいんじゃないかと思ったんです。 阿部 飛ばし方を変えたということですね。 石川 そう。例えば切り返しは静かにするけど、その分、腹筋とか体を鍛えて飛ばすとか。手首とシャフトで思いっきりしならせて飛ばすんじゃなくて、クラブは静かに使って、足とか体で飛ばす。その理屈、ヒデキ(松山英樹)とかは最たるものですよね。 全然タメがないじゃないですか。 阿部 確かにないですね。
石川 上げて、そのまま下ろしている。タメがないっていうのは飛ばない要素ですけど、曲がらない要素でもあるんですよ。ヒデキは「飛ばない&曲がらない」のを、とんでもない強靭な体を作ってあれだけ飛ばしている。あの体だったら、手首とかを使ったり、タメたりしたら半端なく飛ぶはず。グリップもウィークに近いですしね。でも彼はそれをやらないじゃないですか。それがこう、ゴルフ脳が高いなっていうか。そこには着手しないで、足とかをとんでもなく鍛えて飛ばしている。ウィークグリップでいえば、デシャンボーもそうですよね。あれも飛ばない要素ですけどその分曲がらない。彼は腕をガチガチに固めたまま振りますが、トレーニングしてあそこまで飛ばしている。だからなんかこう、結局そのバランスなんですよね。 阿部 「つかまる&つかまらない」のかけ合わせってことですよね。 石川 そうですね。
◇◇◇◇ 石川と阿部のやり取りはまだまだ続いたが、今回はこの辺でお開きに。撮影のあとに推しの石川の取材もでき、フォトゴルファー阿部未悠にとってとても充実した日本シリーズとなった。来年はどんなミッションに取り組んでもらおうか。(東京都稲城市/服部謙二郎)
服部謙二郎