『ウルトラマン』いまのカネゴンは現金を食べない?「動画配信で“投げ銭”稼いでる(笑)」
カネゴンを見れば日本の経済システムの変化が分かる?
「ガラモン」、「レッドキング」、「ゼットン」……今もなおシリーズ本編に登場する歴代「ウルトラ」怪獣たち。時代が移り変わっても怪獣の魅力が不変である証拠です。 【画像】えっ、昭和世代は愕然? こちらがSNSで動画配信を行う「カネゴン」です 一方、ウルトラ怪獣では珍しく再登場のたびに時代の変化に対応しなくてはならない子がいます。 それが1966年『ウルトラQ』第15話「カネゴンの繭」で初登場したコイン怪獣「カネゴン」です。どら焼きのような頭部にジッパーの付いたガマ口があり、長く突き出した目玉に、ひだのついた丸っこいボディが特徴のあの子です。その名の通りとにかくお金が大好きなカネゴンですが、再登場するたびに当時のお金を取り巻く環境が如実に反映されているのです。 『ウルトラQ』のカネゴンはお金に目がない金男という少年が変身した姿で、主食は小銭や紙幣でした。ところがいくらお金を食べてもすぐに胸の金額カウンターが減ってしまいます。 友達も最初こそなけなしのお小遣いをカネゴンに与えて救おうとしますが、それが尽きるとカネゴンをサーカスに売り飛ばそうと画策するなど、高度経済成長期におけるシビアな金銭感覚が反映されていたのです。 初登場から約30年が経過した1997年(平成9年)公開の『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』にはカネゴンそっくりのデジタルカネゴンが登場します。 初代カネゴンと同じく「お金」をエネルギーとするところは変わらないのですが、胸のカウンターはなく腹部にモニターがあります。さらに腕の先端にはクレジットカードを読み取るリーダーが付いているのでした。『ゼアス』という作品自体が出光興産のタイアップで制作されたという事実もまたいっそう、デジタルカネゴンという存在の象徴性を高めます。 そこからさらに30年近くが経過し、時代は平成から令和となり「キャッシュレス」の波が本格的に到来しました。最新作『ウルトラマンアーク』第8話「インターネット・カネゴン」に登場したカネゴンはとうとう「実体」を持たないバーチャルな存在になってしまいました。このカネゴンは自立型AIで、SNS上で動画配信を行なっています。視聴者はデジタル通貨を「投げ銭」することでカネゴンにエネルギーを与えているのです。 昭和は「生身のカネゴン」と「現金」。平成は「生身のカネゴン」に「デジタル通貨」。そして令和は「バーチャルのカネゴン」と「デジタル通貨」。貨幣システムのデジタル化が進むたびにカネゴンの身体性は失われていきました。お金のあり方がそのままカネゴンのあり方に反映されてきたのです。 なんだかファイナンシャル・プランナーのブログのようになってしまいましたが、決して大袈裟な表現ではないはずです。カネゴンは日本の貨幣システムの変遷を知る教材であり、未来を占う存在でもあります。次にカネゴンが登場したとき、果たして私たち人間もバーチャルな存在になってはいないでしょうか。
片野