「周りに迷惑をかけず大人になった人」の心が突然ポキッと折れるワケ
それは前向きなキャリアブレイクで、転職ではなく、あえて無職期間を持つことでいろんな経験をしようという意気込みもあったようですが、実家に戻ったことで、親や家族との距離が近くなり、無職であることに居心地の悪さを感じていたようでした。親のために早く復職した方が良いのでは、と勘繰っているうちに、自分の転機に集中できなくなり、少し距離を置くために宿を求めたようです。 そこから、あれよあれよと宿泊希望者が増え始め、どうやら世の中にはキャリアブレイクしている人が想像よりもいるようだと実感するようになりました。 おかゆホテルを始めて、当事者が多くいることに驚かされましたが、それ以上に経験者の多さにも驚かされました。「私がしていたのはキャリアブレイクだったのか!」「あの期間がなければ今の自分はないかもしれない」などの声をたくさんいただきました。多くの人はキャリアブレイクという言葉を知らず、無意識のうちにその選択をしていたようです。また、その期間中は苦しい思いや葛藤があったものの、振り返ってみればターニングポイントだったと話す人がほとんどです。 こんなキャリアブレイクが日本で文化になったら、という想いを込めて、宿を始めてから1年ほど経った2022年10月に、3人の仲間と「一般社団法人キャリアブレイク研究所」を設立しました。 ● あなたはどれに当てはまる? キャリアブレイクの4パターン キャリアブレイク研究所では、入口別に大きく分けて、キャリアブレイクには4つのタイプがあると考えています。それぞれによって、キャリアブレイクを始める理由、動機、キャリアブレイク後に描いているゴールが少しずつ異なります。また、キャリアブレイクの途中でタイプが変わる人も存在します。
1つ目は「ライフ(LIFE)型」です。妊娠、出産を契機とした育休、産休、離職。ケガや大病、疾患、不安定な精神状態など身体的、精神的な療養期間。それに合わせた介護やケア、サポートなど家族への時間を取るための休職や離職。また、パートナーの転勤や引っ越しや移住など、人生のイベントによって発生するキャリアブレイクをライフ型と呼びます。 仕事よりも優先度の高い人生のイベントが発生し、戦略的、または予期せず発生します。それぞれの捉え方もバラバラで前向きに始まる人もいれば、葛藤しながらスタートする人もいます。一般的なライフイベントが中心のため、世間や周囲からの認知や理解もあり、社会的な視点がある型です。 2つ目は「グッド(GOOD)型」です。最近は、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)という言葉がよく言われ、今まで見えていなかった特性にも目が向けられるようになりました。 自分の特性を自覚している人もいるかもしれませんが、自分を理解した上で活かす働き方は想像以上に難しいです。働きながら分かることもあり、小さな擦り傷を負いながら働き方を模索している人もいます。自分にとってグッドに働くということを目指しているのですが、それがどういう状態なのか分からなくなることや、単純に擦り傷が増えすぎて疲れてしまうことがあります。その中で休職や離職を使って、心身の改善と自分の客観視、グッドに働ける環境を模索するキャリアブレイクがグッド型です。 3つ目は「センス(SENSE)型」です。小中高大学と、優秀に、または、あまり人に迷惑をかけず大人になった人が多いようです。学校の先生や親など周囲からの期待が分かり、勉強や部活動に適度に取り組み、比較的上手に生きてきた方が多い印象です。中にはみんなが憧れる大企業に就職している人や、人生が確約されるような資格を手にしている人もいます。一見すると順風満帆なのですが、自分の心はすり減っていたり、これからの人生に楽しみを感じなくなっていたり、違和感があります。自身が持っている感性が活かせない、つぶされている状況が続き、このままでいいんだろうかと葛藤して、鬱病や適応障害になってしまう人もいます。