上白石萌歌×森田想×加藤拓也監督『滅相も無い』インタビュー 演劇と映像が交差する意欲作の舞台裏を語る
気鋭の劇作家・演出家の加藤拓也さんが監督・脚本を担当するMBS/TBSドラマイズム『滅相も無い』(MBS 毎週火曜 深夜0時59分~、TBS 毎週火曜 深夜1時28分~/配信あり)に出演する上白石萌歌さん、森田想さんと加藤さんにインタビュー。作品の魅力やお互いの印象などを聞きました。 【写真】上白石萌歌と森田想 キャストに上白石さん、森田さんをはじめ、中川大志さん、染谷将太さん、古舘寛治さん、平原テツさん、中嶋朋子さん、窪田正孝さん、堤真一さんが集結した本作は、加藤さんが初めて連続ドラマで全話脚本・監督に挑み、演劇と映像を交差させた完全オリジナルのSFヒューマンドラマ。 巨大な“穴”が現れた日本を舞台に、入るか悩む8人の男女がお互いの人生を語り合う。第3回(4月30日放送)は3番目に穴に入る松岡(上白石)、第4回(5月7日放送)は4番目に穴に入る青山(森田)がそれぞれ穴に入る理由を語り出す。 ◆演じられた役柄について教えてください。 上白石:私は田舎暮らしの松岡という役を演じました。松岡は自分の生き方や、人は生きる上で働くとか、社会に対して自分がどうあるべきかを考えていかなくてはいけない中で、自分自身の心地よいあり方をすごく模索しているような人物です。松岡の最初は結構壮絶なシーンから始まるのですが、そんな極限状態の人物がどうやったら自分としての豊かさみたいなものを求めていけるかを見つけていくような役どころです。 森田:私は帰国生の青山役を演じさせていただきました。幼少期をイギリスで過ごし、日本に来て生活したのちに穴に入ることを決意して、今回の別荘での会合に参加するようになります。青山は、内面で考えることが多かった役で、見られ方であったり、生活する上で自分をどのように出していきたいか、でもそれが出せなかったり、自分の言いたいことが言えなかったり、そこの言い方にも悩んだりとか、人との関わり、特に母親との関わりについて悩んだ部分をフィーチャーして描いていただいて。なので会合でもすごくしゃべったりせずに、自分の中で構築した関わり方で人と接していくような役だったかなと思います。 ◆上白石さんは加藤組に初参加。森田さんは2年ぶりに参加ということですが、本作に参加されていかがでしたか? 上白石:私、たぶん加藤さんが演出されたお芝居を初めて見たのが「誰にも知られず死ぬ朝」という彩の国さいたま芸術劇場で上演されていた舞台で。 加藤:2020年のちょうどコロナ前ぐらいの頃ですね。その舞台の千秋楽が終わった次の日に、演劇は全部やめてくださいみたいに言われていた時期でした。 上白石:その頃ですか。その時の舞台の見せ方がすごく面白くて、お客さんが舞台を取り囲むという不思議な構図で、余白はあるのですが、すごく隙がない空間で。あんなふうにお芝居を全身に浴びた経験は初めてで、衝撃を受けました。私、日記を書いているのですが、その日記に感想をたっぷりと書いたのを覚えています。いつか自分も何らかの形で加藤さんにお目にかかりたいなと思っていたので、今回お会いできてすごくうれしいです。 脚本をもらった時の“これが加藤さんの言葉なのか”という初めての衝撃とずっしり感は忘れられません。今回はオムニバスドラマなので、1人1人の役目とか、どう見せたいかということがあって、その中で自分はどういうことを伝えたいかを本読みのときに確認したりして。でも現場に行ってみないと分からない、どんな映像になるかも分からないという、みんなが分からない状態でクランクインをしたので、初日はビクビクと過ごしていましたし、初めてのことが多く、すごく新鮮で刺激的な日々でした。 森田:私もすごく新鮮でしたし、本当に難しいんです。正解を見つけ出そうとするのも野暮に感じますし、どこが良かったと聞くのも、自分で考えるのもすごく野暮。萌歌が拝見した隙がなかったお芝居というのが、本当に加藤さんの作品を象徴していると思っていて。本当に見る側としても、こうして演じる側としても、加藤監督本人がそうさせているわけではないんですけど、勝手に背筋が伸びてしまうというか、いい意味でいつも試されている気がするので、こちらがそうやって勝手に緊張して、勝手にやる気が出るような、すごくいい緊張感のある現場だと、今回特に思いました。