視覚障害あっても街歩きを 関西万博で実験「AIスーツケース」 失明した開発者が語る未来
視覚障害者支援に向けた技術を開発する、IBMフェローで日本科学未来館(東京都)館長の浅川智恵子さん(65)が、京都市北区の京都ライトハウスで講演した。来年の大阪・関西万博で実証実験を行う「AIスーツケース」など最新のプロジェクトに触れ、聴講した約100人が科学技術によって障害の有無にかかわらず共に暮らせる社会に思いをはせた。 浅川さんは、京都ライトハウスを創設した故鳥居篤治郎氏をしのび、視覚障害者福祉の発展に貢献した人をたたえる第41回の「鳥居賞」に選ばれた。授賞式後に記念公演で登壇した。 浅川さんは事故が原因で14歳の時に失明。講演では「一人で書籍が読めなくなったり、外出できなくなったりして将来自立できるのか不安だった」と当時の心境を振り返る一方で、スポーツや料理など何にでも取り組んできたと説明した。日本IBMに入社後は、点訳ソフトウエアやウェブ上の文字情報を読み上げるブラウザーなどを開発した。 人や障害物をよけながら視覚障害者を安全に誘導する、研究中のAIスーツケースについても紹介。「出張時にスーツケースと白杖(はくじょう)の両方を持つのは大変」との自身の経験からアイデアが生まれたことや、内部にはコンピューターやセンサーが組み込まれ、音声案内などで自由に街歩きを楽しめることを動画を交えながら示した。 浅川さんは万博を、AIスーツケースの社会実装を加速させる大きなチャンスと捉えているという。「視覚障害のある人もない人も、ロボットが人を支援できる未来を思い描いてもらえるのでは」と結んだ。