長期的にマネーはどこからどこに向かうのか。オルカンもいいけど、また違った国際分散投資の面白さ
新NISAが始まり、長期・分散・積立投資をするうえで、世界のどの国や地域に投資していけばいいか考えている方もいるのではないでしょうか。 投資初心者向けには、株式投資の安定運用を目的に全世界株式型の投資信託、いわゆる「オルカン」(オール・カントリー)が勧められることが多いかもしれませんが、中には投資経験者で積極的に運用していきたいと考えている方もいるでしょう。 そこで今回は、あえてオルカンを外すなら、長期の国際分散投資についてどのように考えていけばいいか、近年の世界情勢を基に検討していきます。
世界情勢を世界地図で俯瞰する
2024年は、2022年から続くウクライナ戦争や、2023年に起こったイスラエルとパレスチナをめぐる戦争、そしてイエメンのフーシ派による紅海周辺での船舶攻撃といった争い事が、どのように幕引きするかが注目される1年になるかもしれません。また、長年懸念される台湾問題をめぐり、東アジア情勢にも目を配る必要はあるでしょう。 世界は今、ヨーロッパ、中東、東アジアと、3つの地域で大きな火種を抱えています。この背景には大国の興亡がありますが、特に「アメリカ一強の終焉」が指摘されます。端的にいうと、今のアメリカの軍事力では、ヨーロッパと中東、東アジアにおける三正面作戦を同時に展開することができないということです。 それだけの軍事力を一国が保有すること自体、無理があるように思いますが、だからこそアメリカは同盟国や関係国と協力関係を築き、世界覇権を維持しようとしていると考えるのが妥当ではないでしょうか。 仮に、アメリカと敵対する国を中国、ロシアと考えてみます。 ウクライナ戦争はウクライナとロシア間の戦争ですが、ウクライナ側についているのがアメリカも加盟しているNATO(北大西洋条約機構)で、ロシアに対しては中国が支援していると見立てます。 また、イスラエルとパレスチナ間の戦争については、イスラエル側にはアメリカがつき、パレスチナ側(ハマス)にはイランとロシアがついていると推論した場合、米ロの対立構図が浮き彫りになってくるかもしれません。そして、台湾をめぐる問題ですが、こちらは言わずもがな米中の対立構図が見て取れます。 中東情勢の変化としては、これまでサウジアラビアとイランの関係改善への努力がなされ、またサウジアラビア産の原油を中国が人民元建てで購入するといった動きもあり、アメリカから距離を置こうとするサウジアラビアの思惑が顕在化してきました。 他の新興国では、急速な経済成長を遂げようとしているインドは、表向きアメリカとの関係を重視しながら、ロシア産の原油を買うなどの動きがあります。また、ブラジルは2023年、アルゼンチン、エジプト、イラン、エチオピア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の6ヶ国が新たに加盟したBRICS首脳会議において、世界における新興国の存在感を高め、途上国との協力を呼びかけました。 このように、超大国とそれらに関係する国々、そして第三国の思惑がちらつく現在の世界情勢ですが、図表1のように世界地図で俯瞰すると、地政学的な位置関係に基づいて思考をめぐらすことができます。 図表1