「ヒトは昆虫のような生き方に…」老いるのは人間だけ? 東京大学教授が語る「老いるのは理由がある」
なぜ? ゾウは「ガン」にならないし、「老化」もしない
ヒトはいつかは老いる。年を重ねれば、病気にもなるし、ボケるのも心配だ。とくに心配なのはガン。日本人の2人に1人はガンに罹患し、男性は4人に1人、女性は6人に1人がガンでなくなるという。死ぬまで元気でいたい。ピンピンコロリが理想だと考える人は多いだろう。 【画像】足元はおぼつかず…安倍派「親分」森喜朗元首相が銀座の「1人4万円」最高級ステーキ店に 「それを実現しているのがゾウ。ゾウの中には60年以上生きるものもいますが、あれだけ体が大きくて、細胞の数が多いのに、ガンにはならないのです。死ぬ直前まで仲間と数十㎞を歩くなど、老化症状も示しません」 こう言うのは、『なぜヒトだけが老いるのか』の著者、東京大学定量生命科学研究所教授の小林武彦氏。 小林教授によると、ガンや認知症になるのは、加齢とともにDNAが徐々に壊れ、細胞が老化するから。けれど、ゾウはp53に加えてLIF6という遺伝子を持っているためガンにはならないのだとか。 「p53は老化細胞を除去する働きがあり、LIF6はp53の働きを助ける遺伝子です。DNAが傷つくことでガンになりますが、ゾウは傷ついた細胞を殺して排除する能力に長けている。 老化して傷ついた細胞も排除されるため、ゾウは老化症状を示さず、死ぬ直前まで仲間とともに数十㎞を歩く。心筋梗塞など循環器系の不具合で死ぬことが多いのです」 なんとうらやましい。ところが、LIF6はゾウだけが持つ遺伝子で、ヒトにはない。現在、ヒトにLIF6を入れたらどうなるかという研究が行われているそうだが、まだ目途はたっていないとか。 ◆老いたヒトの知恵・知識・利他性が人類を強い集団にした ほとんどの野生動物は生殖能力を失うと寿命が尽きる。なぜヒトだけが生殖能力を失っても何十年も生きているのか。医学の進歩のおかげなのか? 「医学の発達だけで寿命が延びたわけではありません。病気になれば医療は必要ですが、それよりももっと大切なのは、栄養状態と公衆衛生。 食べ物が豊富になり免疫力が高まり、生活環境がクリーンになることで伝染病が減ったことが最近寿命を延ばした大きな要因です。けれど、それよりももっと前から老いたヒトがいる集団が有利だったのです」 人類の歴史は700万年前から始まる。そのころから徐々に寿命を伸ばしてきたと考えれば、確かに医学は関係ないのかもしれない。 「ヒトは700万年前に森から出て、平地で集団で生きる道を選びました。そして、老いたヒトがいる集団のほうが勝ち残ってきた。なぜかというと、老いたヒトはさまざまな経験を積んで知識や技術、知恵があり、集団をまとめる力があるからです」 若いときはエネルギーがあり、いろいろ挑戦し、仕事などでも競い合う、いわゆる“挑戦的・競争的”なライフスタイル。それが年齢を重ね、エネルギーが減少するにつれ、視野が広がり、いろいろなことに口を出したくなる“協力的・公共的”なライフスタイルに変わる。