【被災地は今】女川町で「まち開き」 生まれ変わる町に涙する人の姿も
現在の女川町のようす。駅前にはおしゃれな商店街が再建された(安藤歩美撮影)
高台に建つJR女川駅から、女川湾を望みゆるやかに傾斜する、まっすぐな道が伸びた。道に並行して整備された街路灯の間を、人々が行き交う。 東日本大震災から4年と9カ月以上が経つ23日。宮城県女川町で、津波で壊滅的な被害を受けた商店街が再建され、開業を迎えた「まち開き」があった。町の「顔」となる商店街が姿を現したことで、この町でも人々が買い物を楽しんだり外でコーヒーを飲んだりするような日常的な賑わいを、ようやく目にすることができるようになってきた。
ようやく再建された商店街
津波が来た際の避難路としての機能も持つ駅前大通りの両脇に開業した商店街、「シーパルピア女川」。新商店街には、これまで仮設店舗で営業を続けていた商店や、新たに出店する店など、27店が入居した。商店街にはピアノ曲のBGMが流れ、音楽ホールを備えた町の交流館を始め、コーヒー店や飲食店、衣料品店、花屋やスーパーなどが立ち並ぶ。クリスマスイブの24日、商店街は町外からの観光客や町民らが行き交い、活気付いていた。
コンテナを改装した仮設店舗から移転
「全国、全世界の支援でここまで来れた。みなさんのおかげです」。新商店街に入った「ふらわ~しょっぷ花友」の佐藤伶奈さん(25)はそう話す。海のすぐそばにあった店が津波で流され、震災後はコンテナを店に改装した仮設商店街「コンテナ村商店街」で営業を続けてきた。 仮設商店街は今年に入って道路の通行止めの影響で来客数が激減し、若い人の足も遠のいていたという。開放感のある新しい店内に移ったことで、フラワーアレンジメントなどの体験教室を開くなどの新たな夢も膨らんでいる。「せっかくおしゃれなところで開業することができたので、お花をたくさん揃えて、いつもワクワクするようなお店を作っていけたら」と、声を弾ませる。
「町に彩り添えていく」
スペインタイルの制作販売店「みなとまちセラミカ工房」は、町のもう一つの仮設商店街「きぼうのかね商店街」から移転した。20メートル近い津波が押し寄せ、文字通り壊滅的な被害を受けた女川町。代表の阿部鳴美さん(54)らは、彩りが失われた町に華やかで明るい色彩を添えようと、震災後にスペインタイルの制作を始めた。新しい商店街に移り、「ようやく、ここが第一段階。タイルは割れさえしなければ、色あせずに何百年先ももつものなので、再建される住宅の表札など、これからどんどん街を彩っていきたい」と意気込む。