辺野古「代執行」から1年 紆余曲折経て着工 移設容認の元名護市長「一日も早い完成を」
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する県に代わり、工事の設計変更を承認する「代執行」に踏み切ってから1年となる28日、防衛省がついに軟弱地盤の改良工事に着手した。だが、玉城デニー知事は移設反対の姿勢を崩しておらず、移設を巡る国と県とのしこりは解消されていない。新たな法廷闘争によって移設工事の進捗(しんちょく)に支障が生じれば、日本周辺の安全保障環境が厳しさを増す中、南西防衛にも影響を及ぼす恐れがある。 【写真】沖縄・玉城知事は軟弱地盤改良工事に不快感「直前に連絡」 「これまで紆余(うよ)曲折あったが、ようやく軟弱地盤の改良工事に着手した。感無量だ」。辺野古移設を容認してきた元名護市長の島袋吉和さん(78)はそう胸をなでおろし、「一日も早い完成が待たれる」と話す。 日米両政府は平成8年、沖縄の米軍基地11施設計5千ヘクタールの返還に合意したが、沖縄の基地負担軽減の道のりは遠い。 政府は平成11年に移設先を辺野古と決定。25年に当時知事だった仲井真弘多氏は辺野古沿岸部の埋め立てを承認したが、後任で移設反対の故翁長雄志氏が27年に承認を取り消し、政府との法廷闘争が繰り返されてきた。 昨年末の代執行を経て、防衛省は今年1月、大浦湾側の埋め立て区域の外側で箱形コンクリートを仮置きする海上ヤード設置のための工事に着手。8月には、コンクリート製の護岸を整備するためのくい打ち作業を開始し、県の法廷闘争で止まっていた時計の針が動き出した。 玉城知事は今月27日、1年前の代執行について、「選挙で県民の負託を受けた知事の処分権限を一方的に奪い、多くの県民の民意を踏みにじるものだ」と改めて批判。軟弱地盤の改良工事についても、「国内に前例のない難工事となることが予想される。新たな事由が生じた場合は関係法令の規定を踏まえ、適切に対応していく」と述べ、さらなる法廷闘争の可能性に含みを持たせた。 だが、法廷闘争は行き詰まっている。名桜大の志田淳二郎准教授(国際政治学)は「和解や取り下げを除き県が全て敗訴しており、再び法廷闘争に持ち込もうとすれば、政治のために司法を利用しているとの批判が出ても仕方がないだろう」と指摘する。 辺野古移設に反対し、玉城知事を支持する「オール沖縄」勢力は今年6月の県議選で大敗、過半数割れした。「民意」を盾に司法の判断に背を向け続けた玉城知事にとって、大きな後ろ盾を失ったと言っても過言ではない。