錦織圭 全米への不安要素は?
マンハッタンの日系四つ星ホテル『ザ・キタノ ニューヨーク』で行なわれる錦織圭の華々しいプレトーナメント会見も、今年で3度目となった。 「これまでロジャー・フェデラー選手やマリア・シャラポワ選手など当ホテルのゲストはチャンピオンになっておりますので、ぜひ次は錦織選手に……」と紹介された最初の年は、まさかの1回戦負け。2度目となる昨年は、体調面に関して「不安100%」で臨んだ会見だったが、あれよあれよの決勝進出だった。 礼儀正しいホテルスタッフたちに出迎えられ、ずらり並んだカメラと報道陣の前に登場するときの照れくさそうな表情や仕草は最初と何も変わらないが、ここに戻って来るたびにその待遇に相応しいテニスプレーヤーへと成長してきた。 3度目の今年、マイクを通して伝える言葉も力強い。 「今の状態は、体調の面でも気持ちでも自信を持っている。今までで一番いいんじゃないかと思います」 これまで、夏のハードコートシーズンではあまり好結果を残せなかった。ハードコートは好きなはずなのに、この時期の成績が伴わなかったのは、クレーから芝へとジェットコースターのようなヨーロッパ・シーズンで息切れしてしまうと考えるのが妥当だ。今年も芝で左ふくらはぎを痛めたところまでは過去と同じ嫌な流れだったが、復帰戦のワシントンで優勝、続くモントリオール・マスターズでベスト4に進出と、違いを見せた。 優勝したワシントンよりもモントリオールのほうがいいプレーができていたと言う。中でもダビド・ゴファンとの3回戦とラファエル・ナダルとの準々決勝を「自分からウィナーをとる理想的な試合だった」と今回の会見で振り返った。 しかし、皆が心配しているのはそのあとのことだ。アンディ・マレーに3-6 0-6で敗れた準決勝。その第2セットで見せた動きの鈍さ、勝負をあきらめた素振り、観客のブーイングにも似た反応から受けた影響、試合中に痛みが出たという臀部の容態、等々……。 まずはケガの状況だが、問題ないと考えていい。何度も書くように、錦織は正直な性格で、痛みを隠すことはあっても、痛みがあるのに「体調は万全」とは言わないからだ。ケガの心配どころか、丸2週間実戦から離れた錦織の体はフレッシュでいい状態なのだ。 シンシナチ・マスターズを欠場した理由は、「臀部の違和感」だったが、実際のところそれは深刻な問題ではなかった。あの試合後すぐにマネージャーからは「検査の結果、フィジカルに問題はなかった」という報告がマスコミにあてて出されている。「疲労」が原因だとのことだった。しかし「疲労」のような曖昧な理由では、トッププレーヤーに出場が義務づけられているマスターズの欠場理由として正当と認められるものかどうか……。臀部の違和感は嘘ではないし、発表内容に関してはプロの事情を察してほしい。錦織が独断で決めて発表していることでもない。