『地面師たち』豊川悦司、悪の魅力を放つスーツスタイルの秘密
■こだわった足元、カウボーイブーツのカッコよさ
これは余談だが、玉虫色のスーツの生地のソラーロという名称は、「ハリソンズ」という英国を代表する名門生地グループが名付けたものである。ひょっとしたらハリソン山中のハリソンという呼び名はここから来ていたりして。 また、豊川悦司氏が最もこだわったのが靴だ。ハリソン山中はいつもスーツにカウボーイブーツを履いている。これは豊川悦司氏が大根監督に直接提案したのだそうだ。 ネットフリックスの公式インタビューで、「カウボーイブーツは僕のアイデアだったんですよね。『ノーカントリー』という映画の中でウディ・ハレルソンが演じていた役は、スーツを着ていて、足元はカウボーイブーツというキャラクターでした。そのファッションが、僕の中ではとても印象に残っていて、『今回はスーツで行きましょう、しかもとびきり良いスーツで』となったときに、足元はカウボーイブーツがいいんじゃないかと、僕のほうから提案してみました。人を踏み潰すようなシーンとかもあったので、だったらそっちのほうがカッコいいんじゃないかと思って」と話している。
■ジョーカーのようなダークヒーローを意識?
言われてみれば確かに、「ノーカントリー」で無表情に銃を撃ちまくる殺し屋のウディ・ハレルソンと、「地面師たち」のサイコパスなハリソン山中の変態キャラは通じるものがある。また筆者はハリソン山中を喜々として演じている豊川悦司氏は、映画「ジョーカー」でホアキン・フェニックス氏が演じたジョーカーのようなダークヒーローを意識しているのではないかと考察する。 ちなみに豊川悦司氏がインタビューで語っている「人を踏み潰すようなシーン」とは、北村一輝氏演じる情報屋の裏切りを知ったハリソン山中が、「最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュなやり方でいかせていただきます」と言って、不気味にうすら笑いを浮かべながら、縛られて息も絶え絶えの北村一輝氏の顔面を先の尖(とが)ったカウボーイブーツで蹴り潰すのだ。ハリソン山中怖っ! しかしそこはさすがトヨエツ。誰もが怖がるサイコパスな変態キャラで、一歩間違えればひと昔前に流行ったチョイワルオヤジになってしまう、ギリセーフな着こなしのスーツスタイルのハリソン山中だが、豊川悦司氏が演じるとセクシーでお洒落なイケオジになるから不思議である。