大阪・関西万博プロデューサー・小橋賢児が語る「SDGs」への思い。楽しみながら地球に優しくできること
井植 私たちが活動を始めた2011年頃は、まだ持続可能性という単語自体もありませんでしたね。 小橋 確かに。それを考えると、10年でこれだけ進歩したとも感じますね。 井植 小橋さんは、2020年のパラリンピックの閉会式を短期間でまとめ上げられて、いまは大阪・関西万博の催事企画プロデューサーを務めていらっしゃいますよね。万博といえば国をあげての一大イベントですが、その中での持続可能性について、どうご覧になっていますか? 小橋 宇宙飛行士・毛利 守さんの「その一歩が未来を動かす」という言葉が、大阪・関西万博の催事テーマです。「混沌とした時代だからこそ、個がそれぞれに一歩を踏み出すことが改めて大事」という意味が込められています。 国、企業、自治体、個人、本当にいろんな人たちが一歩を踏み出すチャレンジをして、184日の会期を盛り上げるのが万博です。作る側が作って終わりではなく、来場する人々がそれぞれに気付きを得て、何らかの化学反応を起こしながら、次の一歩を踏み出していく機会となればいいと思っています。
井植 自分の中のスタンダードが変わるきっかけとなる体験ができるといいですね、未来を担う子供たちにとっては特に。 小橋 はい。踏み出された一歩ずつの連鎖が、いつか振り返ったときに「万博から始まっていたよね」と言えるような未来へとつながっていくことを願っています。万博は会場の中だけじゃない。見えないところでも、万博に向けて動いている人が日本中、世界各地にたくさんいます。 井植 万博の組織委員会の中には、持続可能性に配慮する調達コードを作る部署というのもありますよね。私はそこに少し関わっていて、意見を聞いていただいています。2021年の東京オリンピックやパラリンピックから、皆さんすごく勉強していますし、この数年で大きく環境への意識が向上しています。 小橋 2021年はどんな感じだったのですか。 井植 2021年に開かれた東京大会のときも、ロンドン、リオに続いて「持続可能性に配慮した調達方針」が制定されました。しかし、結果として水産物の調達方針はロンドン大会の方針より後退し、多くの議論を呼んだのです。結果的にはサプライヤーの努力で調達した、水産物のほとんどがMSC認証を取得したサステナブルなものになりましたが、さまざまな課題が浮き彫りになりました。私たちはこの経験を活かしていけば良いのです。 今回の万博には、そのとき得た学びがしっかり反映されていると思います。水産庁の意向を取り入れた調達方針を取り入れつつ、そのうえで具体的に目指すべき理想的な持続可能性の指針(アスピレーショナルスタンダード)を策定したのです。 つまり、どういう未来に向かっていかなければいけないのかという目標、意識がしっかりしています。