年の差を超えた友情を描いた邦画の傑作は? 珠玉の名品(3)女子高生と老婦人が深める絆…BL漫画が生んだ奇跡
人が心を通わせ合うとき、歳の差は問題ではない。しかし、何かと数字にとらわれてしまうのが人間だ。だからこそ、常識を超えた瞬間に心がときめく。今回は、歳の差のある友人関係を描いた日本映画を5本セレクト。一般的なバディものと一味違った、年の離れた人間同士の交流が育む温かな物語をご紹介する。第3回。(文・シモ)
『メタモルフォーゼの縁側』(2022)
原作:鶴谷香央理 監督:狩山俊輔 脚本:岡田惠和 出演:芦田愛菜、宮本信子、高橋恭平(なにわ男子)、古川琴音、汐谷友希、伊東妙子、菊池和澄、大岡周太朗、生田智子、光石研 【作品内容】 17歳の佐山うらら(芦田愛菜)は、地味な高校生。家でこっそりとBL漫画を読むことが、唯一の楽しみだ。ある日、彼女がレジ打ちのアルバイトをしていると、1人の客が1冊のBL漫画を購入する。品の良い老婦人、市野井雪(宮本信子)だった。以降、2人の交流が始まるのだが...。 【注目ポイント】 17歳の高校生と75歳の老婦人。実に58歳も年の離れた2人がBL漫画を通して友情を育んでいく姿が描かれる、心温まる作品だ。 同級生たちのように、きらきらとした高校生活を送れないことに負い目を感じているうららと、夫に先立たれて張り合いのない日々を過ごす雪。そんな2人が、同じBL漫画のファンとしてつながっていくうちに、人生が充実していく。 核家族化が進んで、幅広い世代の人と関わることのない時代に、この2人のような関係を築けたら、なんと素晴らしいことだろう。そんな願望も込められた作品と言える。 「大事なものは、大事にしなきゃだめね」劇中で雪子は、自分の思い出話をしながら、こんな言葉をつぶやく。この言葉を聞いたうららは、今まで憧れでしかなかった自分の漫画を書こうと決心する。そして、自分の作品をコミケで売ることになるのだ。 雪子の言葉で未来をつかみかけるうららと、彼女を見て若々しい心を取り戻す雪子。素晴らしい友情関係といえるだろう。観終わったあとに、清々しい気持ちになる映画だ。 (文・シモ)
シモ