「年をとったら借金をしてはいけない」と考える人の重大な盲点 間違った思い込みを捨てて老後の生活が豊かに
私は彼からこの話を聞いたとき、二重の意味で驚いた。 1つ目は独身生活を長期間続けるとこんなにお金が貯まるのかという点であり、2つ目は50代という年齢になってキャッシュで不動産を購入したことだった。 1つ目は、冷静に考えれば別に驚くことはなかった。独身で実家暮らしを30年も続ければ、住宅の費用や子供の養育費がかからないので、地方出身の既婚者に比べて、たくさんのお金が貯まることは理解できる。 私が2人の子供を養育している頃、子供に大学教育まで受けさせると最低でも一人当たり2000万円はかかるといわれて驚いた記憶がある。
それから逆算すると、未婚で子供のいなかった彼が住宅を買うのに4000万円もの大金をポンと出せるのは、当然と言えば当然だった。 しかし2点目はどうしても合点がいかなかった。50代といえば10年先の定年退職(当時は60歳定年が一般的)が視野に入ってくる年齢だ。 その年齢で30年のローンを組めば支払いが完了するのは80代だ。退職後も借金を抱えたくない、金利支払いに追われたくないという心情は十分に理解できる。
しかし私が彼の立場なら、手持ちのキャッシュの一部を頭金に充当したとしても、購入資金の大半は住宅ローン(銀行の融資審査に合格することが大前提)で手当てしただろう。 財務諸表的にいえば、負債の部に住宅ローンの借金、資産の部に購入したマンションが計上される。 ■住宅ローンで手元のキャッシュが増やせることも 住宅ローンにかかる月々の金利支払いは、毎月の月給から充当できる。定年退職後も仕事をしていれば同じく月給から振り向ければ良い。仕事をしていなければ、公的年金や手持ちのキャッシュからローン金利の支払いにあてることも可能だ。
あるいはそれも面倒臭ければ、正式な退職時点で手持ちのキャッシュを使って借金をすべて早期返済してしまえば良い。 重要なことは、シニア世代は手持ちのキャッシュをできるだけ保持し続けるべき、ということだ。 50代で住宅ローンを組む最大のメリットは、手持ちキャッシュをそのまま手元において老後に向けた資産形成に役立てられる点だ。 B君は手元にあるキャッシュ4000万円を利回り4%の銘柄に投資すれば、年間160万円の配当金(税引き前)を手にすることができた。