「年をとったら借金をしてはいけない」と考える人の重大な盲点 間違った思い込みを捨てて老後の生活が豊かに
一方、先進国の若い世代は2~3割程度の頭金さえ貯めることができれば、早い段階からローンで自宅や自動車を購入して快適な生活をエンジョイできる。ローン制度は人類の偉大な発明の一つだといっても過言ではない。 その偉大な発明を高齢だからという理由で自ら放棄してしまうのはもったいない話だ。 かなりの高齢になって体の自由がきかなくなれば自動車の運転免許は国に返上するのが筋だが、ローンは何歳になっても返済能力さえあれば返上する必要はない。
この“第2”のキャッシュの一部をうまく長期の高配当利回り銘柄への投資に活用できれば(短期投資ではないことに注意)、生活をさらに豊かにすることができる。 企業でいえば、銀行や資本市場から借金で資金を調達して工場を建設し、そこで製造した製品を市場で販売して安定的な収益を上げていくことと同じだ。 バランスシート(貸借対照表)の負債項目にある借金と資産項目の設備とのバランスをうまく図りながら収益を上げ、借金の元利金も返済していく。これができれば、企業経営としてはいくら借金してもまったく問題ない。
むしろそれをやらないほうが企業家精神に欠ける消極的な経営だと、株主から烙印をおされかねない。 つまり借金はすべてが悪ではない。もちろん金利が上昇に向かえば、こうしたローンも使い勝手が悪くなる。 しかし、企業活動の収益が利払いを上回っているかぎり、つまり利払いを続けることができるかぎり、前向きに取り組むべき選択肢の一つだ。この鉄則は、企業でも個人でも、若年層でもシニア層でも変わらない。 ただ誤解のないように言っておくが、私はここで信用取引を推奨しているのではない。本当に実現するか不確かな値上がり益を根拠に借金で株式を買うのは厳重に慎むべきである。
■年齢を重ねるほど現金を大切にすべし いまから十数年前になるが、私が50代半ばに差し掛かった頃のことだ。別の会社に勤務する学生時代の3歳年下の友人B君がいた。彼は30年近く独身生活をエンジョイしたあと、50代前半になってようやく現在の奥さんと知り合って結婚した。 それまで横浜市の郊外の実家で両親と暮らしていたが、新婚生活を営むための住居が必要になり、都心で4000万円以上もする2LDKのマンションをキャッシュで購入したのだ。