SNSを使ったいじめ相談窓口 国や自治体が模索
9月10日からは長野県でLINEをつかったいじめ・自殺相談が試行的に始まる。期間は9月23日まで。県がLINEでアカウントを新設し、期間中の午後5~9時に登録者が相談を書き込むと、県が委託したカウンセラーなどの相談員が悩みへの答えなどを返信する。県内の中高生約12万人を対象に、登録用のQRコードを今月22日から学校で配布している。LINE相談に対応するカウンセラーは電話相談の人員とは別になるという。 相談員はLINEで話を聞き、そこでの完結が基本だが、解決に動いてほしいという相談者の意向があれば、学校などに連絡するといったことも考えられるという。 長野県教育委員会・心の支援課の担当者は「子供たちはほとんど電話を使っていないので、電話相談窓口に加えて、SNSでの相談体制もあればいいと思っていた。とはいえ、どれぐらい相談がくるのかや、LINEの短いやりとりで本当に相談が聞ききれるか、また相談員もうまくアドバイスを伝えられるか、など、課題もあると思う。短い間ではあるが、やってみて何が課題になるか、知見をためたい」と話す。 LINEの相談は、滋賀県大津市でも試験導入される。11月1日から2018年3月31日までの平日、午後5時から午後9時まで市が委託するカウンセラーが生徒からの投稿に対応する。対象はモデル校の生徒約3000人としており、モデル校の生徒へは、相談用LINEアカウントを登録するために必要な「QRコード」が入ったチラシ等を配布する。
SNSによる相談窓口の課題とは?
文部科学省がまとめた報告書によると、SNSによる相談窓口には課題もあるという。電話相談は24時間対応されているところも多いが、SNSによる相談受付は24時間対応には至っていない。そのため、時間外に子供がSNSで相談を持ちかけたものの、応答がないままに不測の事態に発展してしまうことも考えられるという。SNS相談は、現段階では即時対応できない点を子供に理解してもらう必要がある。 また、長野県が心配するように、SNSのやりとりでどこまで子供の心情を正確に読み取れるかは不透明で、相談員が子供の気持ちを誤解する可能性もある。 さらに、相談内容が文字や画像で残るため、通信ログについては個人情報の管理が厳格に求められる。相談内容自体の分析・研究が相談対応能力の向上につなげられる可能性があるが、万が一内容が流出した場合、子供からの信頼を大きく損ねることになるため、情報の2次利用を行いたい場合でも、慎重な検討が必要だ。 中学生以下の子供、特に小学校低学年の児童の場合にはスマートフォンを持っていない場合も多い。 これらの事情を踏まえると、文部科学省は、SNSと既存の相談窓口(電話やメール)の両方を行い、相乗効果を生み出すことが望ましいとする考えをまとめている。 元公立中学校教諭で、子供とスマートフォンの関係などを研究する兵庫県立大の竹内和雄准教授は「これまで相談を受ける側は、SNSで相談をやろうとする発想自体がなかったが、電話相談やメール相談に子供がこないということもあり、現場が変わり始めている。一方で、実際に相談に応じるスキルのある人が、SNSに親しんでいない人が多いという課題もある。相談を受け取る側のネットについての知識を高めていく必要がある。ネットに詳しい若者とベテランカウンセラーが一緒に組んで事業を始めるなどの工夫が必要だ」と話している。 (取材・文/高山千香)