SNSを使ったいじめ相談窓口 国や自治体が模索
2学期が始まるこの時期、いじめに悩んでいる子供たちの心理的負担はより一層大きくなる。そんな中、いじめの相談窓口を電話ではなく、SNSを使ってやろうとする取り組みが国や自治体で進んでいる。千葉県柏市では、匿名のまま通報できるアプリの導入が始まった。また長野県と大津市はLINEと協定を結び、LINEによる相談窓口を今年中に試験的に開設する。文部科学省は28日、SNSを活用した相談体制の構築について、中間報告をまとめた。来年度から研究事業などとして一部の学校や地域でSNSによる相談業務を行うことを検討しており、2018年度の概算要求にも盛り込むという。
電話は子供になじみなく、相談しづらい
SNSによる相談が模索されているのはなぜか。文部科学省が28日に公表した中間報告によると、最近の若年層のコミュニケーション手段はSNSが圧倒的な割合を占めるようになっているという。総務省・情報通信政策研究所の「平成27年 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、10代の平日1日のコミュニケーション系メディアの平均利用時間は、ソーシャルメディアの利用が57.8分なのに対し、携帯通話は2.8分にとどまる。 また、札幌市男女共同参画センターが行っている中学生~大学生の女性向けの相談窓口についても、電話相談・面談相談・LINE相談の案内をカードなどで配布した結果、実際に受けた電話相談が24件だったのに対し、LINE相談は847件に上った。(2016年8月25日~9月7日)。この取り組みは同センターが昨年から始めたが、「LINEの相談窓口のほうがニーズが多いと感じている」と説明する。今年も9月7日まで、いじめなども含めた相談をLINEで受け付けている。 これらの調査からは若年層が電話文化に慣れておらず、SNSによる相談ニーズが高いことがうかがえる。
匿名の通報アプリを導入した自治体では、昨年より相談件数が上回る
こうしたニーズを踏まえ、千葉県柏市では、今年の5月から、中学生を対象に匿名でいじめを通報できるアプリ「STOPit(ストップイット)」の導入を始めた。2014年に米国で開発され、米国の約6,000校、約277万人が利用している。文章だけでなく、画像や動画を添付して送ることができるのが特徴だ。柏市教育委員会が通報を受信するが、連絡をしてきた生徒の学校名と学年だけが伝わる。アプリは昨年から日本の私立小中学校でも導入が始まり、公立では柏市が初だ。昨年いじめが発覚した国立東京学芸大学付属高校も導入している。 これまでに60件超の相談が寄せられており、すでに昨年1年間で受け付けた電話相談(24件)やメール相談(3件)を上回っている。新学期が始まる直前の8月21日の週にはアプリをダウンロードしている子供たちに一斉に「心配なことはありませんか?」とメッセージを送信した。夏休み中でもメッセージが毎日届いているという。 教育委員会の担当者は「電話やメールのときよりも反応がよい。まだ柏市内の中学生の5%ぐらいしかダウンロードしていないので、普及していけば、相談はもっと増えそうだ」と手ごたえを感じている。