ビル・ゲイツと松下幸之助に共通する起業家の真髄...儲けではない「もっとも重要なこと」
近年注目が集まっているアントレプレナーシップ。「起業家精神」と訳され、高い創造意欲とリスクを恐れぬ姿勢を特徴とするこの考え方は、起業を志す人々のみならず、刻一刻と変化する現代社会を生きるすべてのビジネスパーソンにとって有益な道標である。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では、米国の起業家教育ナンバーワン大学で現在も教鞭をとる著者が思考と経験を綴った『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』(山川恭弘著)より抜粋して、ビジネスパーソンに”必携”の思考法をお届けする。 『バブソン大学で教えている世界一のアントレプレナーシップ』連載第13回 『日本企業には「夢が、ビジョンがない。」...NASAの清掃員とレンガ職人に共通する成功する起業の秘訣とは』より続く
ビル・ゲイツ、松下幸之助の「夢」
起業家には夢があります。それも「世界を変えたい」という夢があります。そう聞くと「そんなだいそれたことは考えていない」「そんなこと、できるわけがない」と考えてしまうかもしれません。 ビル・ゲイツは、「世界中の人にパソコンを」と夢を描きました。松下幸之助氏は「日本中の家庭を電球で照らしたい」と、二股ソケットを開発しました。前者はガレージで、後者は大阪の小さな町工場で始まっています。 後から彼らの成功譚を聞くと、「そういった夢が大事なのだ」と感じられます。しかし、当時、ビル・ゲイツ、松下幸之助氏の話を聞いた多くの人は「大言壮語」だと感じたでしょう。私たちはその後の物語を知っています。だから素晴らしいと思える。しかし、世の中には大きな夢、志を持っていても、成功しない人が多い。 最近では、起業家、アントレプレナーと聞くと、「事業を起こして一儲け」、事業が育ったらバイアウトして悠々自適、のような印象を抱いている人もいます。しかし、アントレプレナーにとってもっとも重要なことは、「夢」だと断言できます。
成功のカギは「夢」
自宅のガレージから、小さな町工場から、一代で世界に名だたる企業に成長できた。製品の素晴らしさ、アイデアの秀逸さ、組織の構築、それを支える人材、成功の要因はたくさんあります。どれが欠けても今の姿はないかもしれない。でも、もっとも重要なことは「夢」です。言い換えれば、「夢」こそがEntrepreneurshipだと言いたい。 世界を変えるなんてだいそれた夢はない。そう感じる人も多いかもしれません。たしかに、いきなり「世界を変えよう」という発想にいたるには、ある種の才能が必要です。でも、小さな夢はたくさんあるのではないでしょうか。私は日常的に、多くの起業家、あるいは起業家の卵と接しています。彼らは誰しも夢を持っています。その夢も、さまざまです。 バブソン大学に入学してきて、自己紹介の際、私に「ヘイ、プロフェッサー! 俺は世界を変えてやるぜ」と吠える若者もいます。大志を抱き、グローバルな舞台での飛躍を前提とした、ビッグE、大文字で書くENTREPRENEURSHIPを追求する者。 一方で、一見、ささやかな夢を持っている人もいます。そういった人の夢で多いのは、家族、友人といった身近な人のことを考えた夢です。たとえば、車椅子生活の友人のために、段差を難なく越えられる車椅子をつくりたい。そんな、身の回りにあるスモールeだって、立派な夢です。いや、むしろ、そういったスモールeにこそ、ビッグEにつながる源泉があるのです。 『日本は「世界優しさランキング」堂々の最下位...日本人に起業家が少ない衝撃的理由を米国大学講師が考察』へ続く
山川 恭弘