賃貸入居者、マンション購入意向者ともに「住宅性能」重視の調査結果に。災害の甚大化が影響か
次に、ZEH賃貸住宅に魅力を感じると回答した人に対して、「ZEH賃貸住宅で魅力を感じる点」を聞いたところ、「光熱費が抑えられる」と回答した人が63.0%と最も多く、次いで「結露やカビを抑制できる」(55.5%)、「売電収入が居住者に還元されることがある」(54.0%)、「遮音性が高くなる」(52.7%)、「停電など災害時に強い」(49.6%)が続いた。 光熱費の抑制や売電収入などの経済的なメリットを感じる人が多い一方で、太陽光発電などで災害時の停電などに対応できることを挙げた人もいて、防災への関心の高さもうかがえる。
災害の甚大化が防災意識や省エネ意識を高めた?
いずれの調査結果を見ても、住宅の持つ性能の高さを重視する傾向が強いということが分かる。 調査を実施したリクルートのSUUMO編集長兼SUUMOリサーチセンター長 池本洋一氏は、近年の災害の甚大化などが背景にあると指摘する。 リクルートの調査では、40.2%が住まい探しの際に「ハザードマップ」を利用したと回答しており、なかでも、大規模災害を経験した地域やリスクが高いとされる地域で顕著であることから、地震被害や水害などの影響が色濃く出た結果だという。 新築マンションや新築一戸建てなどの分譲住宅では、価格の上昇に伴い、付加価値をつけて販売する傾向があるため、防災対策などに配慮した住宅も増えている。しかし、賃貸住宅では、コストのかかるZEHや防災対策などを備えようという賃貸オーナーは多くはない。 池本氏は「新築だけでなく賃貸住宅を含めて、防災・減災設備の充実や、省エネ化や再エネ化に取り組んでいくことは、オーナー、入居者双方にとって有益である」という。 さて、今回の調査に限らず、住まいの基本性能を重視する傾向がうかがえる調査結果は多い。性能が高くなるとコストアップするが、それでも性能の高さで得られるメリットが大きいと思う人が増えているのだろう。 省エネ性の高い住宅なら、効率的な冷暖房による光熱費の削減や寒暖差が抑えられる快適性が得られる。省エネ性の高い窓ガラスは低いものよりも遮音性が高くなる。ZEHで求められる太陽光発電や蓄電池などは、光熱費の削減に資するだけでなく、災害時の備えにもなる。メリットは確かに多い。 異常気象による猛暑、高まる地震のリスクや水害の甚大化などを目のあたりにして、住宅の基本性能の高さを求めることは、当然のことなのかもしれない。 ●関連サイト 大京・穴吹工務店「パワーカップル500人に聞く、住まいと暮らしの価値観調査」 リクルート「2023年度 賃貸契約者動向調査(全国)」
山本 久美子