シドニーでの慰安婦像設置問題 その背景と影響とは
オーストラリア最大の都市シドニーで、いわゆる「従軍慰安婦」の像を設置する構想が浮上している。同西郊のストラスフィールド市議会は4月1日、州政府と連邦政府の判断に委ねることを決議し、実現はいったん遠のく形となった。世界中から移民が集まるシドニーの多文化社会で何が起きているのか。 同構想を推進しているのは、在豪の韓国・中国系住民が立ち上げたとされる「反日本戦争犯罪連合」(Anti-Japanese War Crime Alliance)と称する団体。活動実態や資金源など詳細は不明だが、韓国系住民が多い地域に慰安婦像を設置することを目指している。計画は今年2月に明るみに出ていた。 設立が最初に具体化したストラスフィールド市は、オペラハウスなどがあるシドニー市内中心部から西へ約5キロの郊外に位置している。人口3万5,000人(2011年)のうち中国系が17.3%、韓国系が8.0%を占め、駅前の商店街は中国語や韓国語の看板が目立つ。韓国系オーストラリア人のオク副市長が、韓国人、中国人、オーストラリア人3人の「慰安婦」の像を設立する構想を全面支援していた。 とはいえ、一般的なオーストラリア人の関心は低い。同国は第2次世界大戦で日本に勝利した連合国の一員だが、戦後経済的な結び付きが強まったこともあって、現在の国民感情はおおむね親日的だ。しかし、ストラスフィールド市で具体的な計画が持ち上がったことで、主要メディアも1日になって初めて報道した。 豪メディア大手フェアファクス傘下の地元紙シドニーモーニングヘラルド(電子版)は同日付で「日本が第2次世界大戦の性奴隷の像に反対」との見出しで第一報を伝えた。「戦争で犠牲になった(すべての)女性にとって象徴的な行動だ」とのオク副市長のコメントを紹介。その上で、日本からフェアファクス系各紙に送られた反対派のEメールを引用して「日本は戦地に慰安所を設置したが、米国やフランス、ドイツも同様の制度を採用しており日本特有の制度ではない」との意見も伝えた。 ■在豪邦人の生活に影響も 1日夜に開かれたストラスフィールド市議会。100人以上の聴衆が集まったため会場を急きょ市議会室からホールに移し、推進派と反対派の双方の意見を聞いた。邦人の出席者によると、韓国・中国系などの推進派が日本の「戦争犯罪」を糾弾した一方、反対派の日本人在住者らは人種間の憎悪を煽るなどとして強く反対。欧州系のオーストラリア人からは多文化社会の調和を損ねるといった意見が出たという。