日本勢のメダル量産に期待 「デフリンピック」11月に日本初開催 21競技に選手約3千人
聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」が今年11月、日本で初開催される。「ろう者の五輪」とも呼ばれ、原則4年に1度の大会。同月15~26日の12日間、東京都を中心に21競技が実施され、70~80カ国・地域から選手約3千人の参加が見込まれる。 デフリンピックは、一般的な話し声の大きさとされる55デシベルを超える音が聞こえない選手が出場する。大会名は、英語で「耳が聞こえない」を意味する「デフ」と「オリンピック」をかけ合わせた造語だ。 歴史はパラリンピックよりも古い。夏季大会は1924年にパリで第1回が開かれ、今回が25回目となる。陸上や水泳では、号砲とともにランプの点灯でスタートのタイミングを知らせる。サッカーでは、主審が旗を振ったり手を上げたりして合図するなど、目で見て分かるような工夫が施される。 日本勢は、2022年の前回カシアスドスル(ブラジル)大会で金12個を含む計30個のメダルを獲得、ともに史上最高の成績を挙げた。一方、認知度の低さが課題で、日本財団パラスポーツサポートセンターが21年に行った調査によると、パラリンピックが97・9%だったのに対し、デフリンピックは16・3%にとどまっている。自国開催を契機に、認知度向上や、聴覚障害者への理解促進を狙う。 今大会は2大会ぶりの金メダルを目指すバレーボール女子のほか、競泳や空手、陸上などでメダル獲得が期待される。ともにデフリンピック4大会に出場し、メダルを〝量産〟している競泳の茨隆太郎(SMBC日興証券)と卓球の亀沢理穂(住友電設)が、それぞれ意気込みを語った。 ■競泳 茨隆太郎 これまでの4大会のデフリンピックで獲得したメダルは、金5個を含む計19個。デフ水泳の第一人者の茨は、東京での大舞台へ、「30年間の積み重ねを皆さんに見てもらえるいい機会。世界記録を出して金メダルを取りたい」と意気込む。 先天性の感音性難聴で、生まれつき聞こえない。体を強くしようとの母親の勧めで、3歳から水泳を始めた。いろいろなものが視界に入る陸上と異なり、水泳は「自分の世界に入って、無の状態になれる。記録を超えられたときに達成感がある」と魅力を語る。小学6年生のとき、デフリンピックの存在を初めて知り、「金メダルを取りたいという夢ができた」。闘争心に火が付き、本格的に世界を見据えた戦いがスタートした。 15歳で初出場した2009年の台北大会は、決勝進出を目標にしていた200メートル背泳ぎで金メダルを獲得し、「今までにない力を発揮できた」と、極度の集中状態〝ゾーン〟を経験。力を出し切り、再びゾーンに入りたいとの思いが、競技を続ける原動力という。