「きれい」と評されてきた菜々緒が初めて見せた「かわいい」要素が斬新『無能の鷹』出色のお仕事コメディ
10月25日(金)に第3話まで放送されている、菜々緒主演の『無能の鷹』(テレビ朝日系)。お仕事ドラマとしては異色なコメディだが、なかなかおもしろい出色な作品だ。 【写真あり】菜々緒のキュートな秋祭りシーンに密着 それと同時に “タイトル詐欺” だとも思っている。菜々緒演じる主人公がぜんぜん無能じゃないからだ。 主人公・鷹野ツメ子(菜々緒)は、ITコンサル会社の営業部に所属する新入社員。エレガントな見た目とスマートな所作で超有能な中堅エース級の風格を備えているが、中身は真逆。 “しごでき” 風なのは表面だけ。PCの起動の仕方がわからない、ダブルクリックやフォルダの意味がわからない、コピー機もまともに使えない、「燃費」を「もえぴ」と読んでしまう。 そのうえ、素で「難しいことを考えると頭が痛くなるんです」「私、“なにがわからないのか” わからない」と言い放ち、ことあるごとにお得意のWhyポーズ(肩をすくめて両手を上げる)で、悪びれもせずさわやかに微笑む。そんなアホキャラなのである。 ■本当に「鷹野は運がいいだけで無能」なのか? 入社試験に筆記テストはなく、面接でデキるオーラを放っていたため採用されたようだが、一応説明しておくと、実は能力を隠しているなんてことはない。また、落ちこぼれが成長していくという物語でもない。 ただ、劇中では「無能」扱いされているものの、鷹野はかなり秀でた才能の持ち主なのである。 まず第3話までは、毎回なんだかんだで鷹野のおかげで営業先の会社などと契約が結べている。たいていは先方が鷹野を超有能なビジネスパーソンだと勘違いして、彼女の意味不明な言動をなにか深いお考えがあるのだろうと勝手に曲解して、その結果、ラッキーが起こって契約成立という展開。 鷹野は終始アホなままなので、彼女の力だけで成果をあげられたわけではなく、なんだかんだで最後は同行した営業部員の懸命なプレゼンで契約成立に至った。しかし、これをもって「鷹野は運がいいだけで無能だ」と決めつけるとしたら、それこそ無能だと思うのだ。 ■相手を “しっかり聞く姿勢” にさせる天才! 鷹野はPCの使い方がわからないので一般的なデスクワークはできないし、営業先で自社のサービスを説明することもできないので、いわゆる「仕事」と言われてイメージするような業務はできない。 けれど、鷹野にはスペシャルな能力がある。それは、相手が誰であろうといつもマイペースで動じないということ。相対する人物がどんなに偉い役職だろうが、どんなに気難しそうだろうが、余裕のある所作で堂々と振る舞っている。 これ、マネしようと思っても、なかなかマネできるものじゃない。 常人ではとうてい及ばない胆力ではないか。鈍感力と言い換えられるかもしれないが、どちらにしても、そんじょそこらの人間では持ちえない才能だ。 そんな鷹野に社外の相手が一目置いてくれたりビビってくれたりして、“しっかり聞く姿勢” になるため、同僚のプレゼンがきちんと先方に響くのである。 鷹野の中身はスカスカだったとしても、そんなのは些細なこと。斜に構えていた人間をも “しっかり聞く姿勢” にさせる能力は、営業マンなら誰しも欲するスキルに違いない。 鷹野は一般的な社会人が当たり前に備えている基本スキルは身についていないものの、一芸に秀でたスペシャリストだということがわかるだろう。 ■菜々緒から「かわいい」をはじめて引き出した!? 『無能の鷹』は、実は社会派ドラマで、ダイバーシティ(多様性)が重んじられるいまの世に一石を投じている作品のような気さえする。 現実社会でも、鷹野のような人材を無能だと決めつけてしまう人のほうが無能だし、有能な上司や先輩ほど鷹野のような人材の才能を引き出してあげられるという、気づきが得られる物語なのである。 余談だが、本作はいままで悪女キャラや “しごでき” キャラで役者としての地位を確立してきて、それゆえに「きれい」と評されてきた菜々緒から、はじめて「かわいい」要素を引き出している点も斬新だ。 今夜放送の第4話でも、社会派ドラマとしての気づきが得られ、菜々緒の「かわいい」を堪能できることを期待している。 ●堺屋大地 恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中