幽霊のような見た目のアナグマが出現、「こんなアナグマを見たのは初めて」と研究者仰天
極めて珍しい突然変異の「赤髪症」か、米国カリフォルニア州のアメリカアナグマ
2023年11月、米国カリフォルニア州のポイントレイズ国定海岸を歩いていたハイカーが奇妙な光景に出くわした。幽霊のようなアナグマがひっそりとトレイルを歩いていたのだ。白っぽいアメリカアナグマ(Taxidea taxus)はサンフランシスコ一帯で大きなニュースとなり、体の色を作り出す色素が減少した白変種だろうと多くのメディアが報じたが、新たに撮影された写真により白変種とは異なる可能性が浮上した。 【関連写真】幽霊のようなアナグマ、もっと白っぽい最初の写真 「『このアナグマを絶対に見つけるよ』と両親や友人に宣言したんです」と、その写真を撮影したビシャール・スブラマニアン氏はナショナル ジオグラフィックのインタビューで語った。白っぽいアナグマのニュースを知り、さらに多くの写真を撮りたいと考えたという。氏は地元の自然保護活動を行う写真家で、カリフォルニア大学バークレー校の学生でもある。 アナグマの外見については「体毛の色は明らかに普通とは違っていましたが、白変種だという印象はありませんでした」と言う。 スブラマニアン氏がポイントレイズの草むらに座り込み、数日間待ち続けてようやく撮影に成功した写真では、アナグマの体毛は赤みがっている。以前の写真では分からなかったことだ。 このことからアナグマ(性別は不明)は、白変種というより、体毛や皮膚が赤みがかった白になるいわゆる「赤髪症(エリスリズム)」ではないかと、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校で進化生態学の教授を務めるテッド・スタンコウイッチ氏は言う。 「非常に珍しい突然変異です」と、アナグマ、ミンク、イタチなどイタチ科の動物を研究する氏は説明する。「こんなアナグマを見たのは初めてです」 米国中央部から西部の一帯、カナダ、メキシコ北部の草原で、巣穴を掘って暮らすアメリカアナグマだが、専門家が記録に残しているアメリカアナグマの赤髪症はこれまでたった2件だ。そのほか、赤髪症はナンヨウマンタ、ヒョウ、ヨーロッパケナガイタチなど数十種で確認されている。 赤髪症とは、動物の体毛や皮膚の通常は黒い部分の色素を作る遺伝子が、赤い色素を過剰につくるようになる突然変異で起こると考えられている。これは父方と母方の両方から同じ遺伝子を受け継いだ時だけに起こる潜性(劣性)だ。ただし、ボルチモアムクドリモドキのように食べものの影響で体の色が赤みがかかる場合もある。