フランス総選挙の危険な賭けにフランス国債市場が動揺:欧州債務危機と似た構図に
欧州債務危機を想起
財政環境の悪化が国債価格の下落をもたらす一方、それを保有する銀行の経営不安が生じ、ユーロが安くなるという構図は、リーマンショック後の欧州債務危機を彷彿させるものだ。実際、ドイツとフランスの10年国債利回りの格差は2017年以来の水準まで拡大し、リスク回避傾向が強まっている。 現時点では欧州債務危機程に事態が悪化している訳ではないが、フランスの総選挙の結果次第では、一段の金融市場の混乱が起こる可能性があるだろう。フランスが当時のギリシャになるまで事態は悪化しないとしても、ギリシャとともに当時の危機を主導した周縁国(PIGS諸国)であるスペイン、ポルトガル、アイルランドの当時の状況に近づいてきていると言えるかもしれない。 実際、フランスの10年物国債の利回りはポルトガルを上回り、スペインに迫っている。金融市場では、フランスの地盤低下が着実に進んでいるのである。 (参考資料) "Why Bond Markets Are So Spooked by the French Election(なぜ債券市場は仏総選挙におびえるのか)", Wall Street Journal, June 14, 2024 「フランス、極右を軸に右派連合 金融市場はトリプル安」、2024年6月12日、日本経済新聞電子版 「フランス:仏国政選は不利 下院解散」、2024年6月12日、毎日新聞 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英