『民衆の歌』ほか豪華な歌唱に期待高まる 現・帝劇最後の『レ・ミゼラブル』製作発表会見に総勢84名キャストが勢揃い
「本当は手が震えるくらいの思いで舞台に立っている。そんなメンバーだからこそ」
小悪党の宿屋の主人テナルディエは、2003年から演じている駒田一、3度目の出演となる斎藤司、前回に続いて出演する六角精児、2017・2019年公演にアンサンブルとして出演し今回テナルディエとしては初挑戦の染谷洸太の4名。 「21年もしぶとくこの役をやらせていただいているが、今日、みんなの歌声聴いていたら、ちょっと涙が出てきてしまった。やっぱり素敵な作品です」(駒田)、「気付けば3度目の出演です。自分の環境、状況によって作品の受け止め方、感じ方が変わってくるなというのを感じてます。私の下にも六角君と染谷君という後輩が入ってきましたので、ふたりを指導しなくてはいけない(笑)。そのために今回はパワーアップし、横隔膜を4枚ほど増やしました(笑)。パワフルな声量で立ち向かいたい」(斎藤) 「前回は色々な事情でなかなかステージを踏めず、帝劇にも数回しか出ていない。よく考えたらほとんど覚えていないんです(笑)。今回は自分にも、お客さんにも記憶に残るような舞台にしたいです」(六角)、「またこの作品に帰ってこれて感謝の気持ちでいっぱいです。テナルディエは20代の頃からいつか演じてみたいと思い続けてきた役。尊敬する先輩方からたくさん学ばせていただきながら、自分らしく楽しみながら役を全うしていきたい」(染谷)と、それぞれの個性を出しユニークに挨拶。 マダム・テナルディエはベテラン森公美子、前回に続いて出演の樹里咲穂、2013年から演じている谷口ゆうなの3人。 森は「1997年より27年間やらせていただいております。前回でこの役は最後だと思ってウルウルしていたのですが、また受かってしまいました(笑)」と笑わせながらも「今回は体力的にも本当に最後かなと思っています。精一杯マダム・テナルディエを生きていきたい。最後の私の晴れ姿を観に来てください」と話す。 樹里は「2回目なので、前回よりマダムの欲深さを増大させて、お客さまに楽しんでいただけるように精一杯頑張りたい」と意気込みを。谷口からは「10年以上この作品に関わらせていただいていますが、初めてマダムを演じたのは28歳の時。作品とともに齢を重ねていけることが幸せです。今回は私たちの宿屋のシーンで新しいこともやるという噂も聞いています。ぜひこれまでたくさん観に来てくださっている方も新しい面を楽しみにしていただけるよう、これからの稽古を務めます」と気になる発言も飛び出した。 学生たちのリーダー、アンジョルラスは前回に続いての出演となる木内健人、初参加の小林唯、前回はアンサンブルとして出演、今回アンジョルラスには初挑戦する岩橋大の3名。 「前回はコロナ禍まっただ中で本来のスタイルではない稽古進行、公演自体も中止が何度かありお客さまに悲しい思いもさせてしまった。今回は全公演をまっとうし、お客さまに楽しんでもらえるよう頑張りたい」(木内)、「僕にとっての初めての『レ・ミゼラブル』、初めての帝国劇場。この劇場は、終わったら(来年には)解体されちゃうんですよね。それだったらもう思い切って、劇場をぶち壊す勢いで歌っていきたい」(小林)、「今回はアンジョルラスとアンサンブルの2枠やらせていただきます。自分としても未知数な部分がありますが、自分にできることを最大限にやって楽しんでいきたい」(岩橋)と話した。 最後にバルジャン役の吉原が「ひとりの人生の大河を演じるということは、精神的にも体力的にもエネルギーがいること。でも『レ・ミゼラブル』という作品は、最後に必ず浄化が待っている。神がいらっしゃって救っていただける、最後には幸福を得られるという役を僕は演じています。(バルジャンのように)正しい人であろうと生きることは非常にしんどいのですが、たぶん生きていくということ自体がしんどいこと。最近、子どもが生まれたのですが、その子どもがオギャーと出てきた時、なんて辛そうに泣くんだろうと思ったんです。でも人は楽がしたくて生まれてくるのではなく、自分の存在意義を探し、ひとりの人生を生きようとして生まれるのではないかなと思う。だからこの作品は、自分の人生を賭けて演じればしんどくて、適当にやれば楽になる。そしてこのカンパニーは、みんなが自分の人生と照らし合わせ、この舞台で勝負しようと意気込んでいる人たちなので……好きなんですよ。 初出演のメンバーには、辛さも怖さも苦しみもある作品だけれど、みんな同じ気持ちなんだよと言いたい。自分が辛いんじゃなく、みんなが辛くて、その辛さを隠すように袖でふざけたりしているけれど、みんな本当は手が震えるくらいの思いで舞台に立っている。そんなメンバーだから、いいチームになれるんだと思います」と、作品のテーマを絡め、作品愛、カンパニー愛を語って会見は終了した。 新キャストの多いカンパニーだが、2024年も素晴らしい作品を届けてくれるだろうことを期待しよう。 帝国劇場での東京公演は12月16日(月) からはじまるプレビュー公演を経て12月20日(金) に初日、2025年2月7日(金) まで。その後3月から6月にかけ、大阪、福岡、長野、北海道、群馬でも上演される。 取材・文:平野祥恵 撮影:塚田史香 <公演情報> ミュージカル『レ・ミゼラブル』 作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク 原作:ヴィクトル・ユゴー 作詞:ハーバート・クレッツマー オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ 演出:ローレンス・コナー/ジェームズ・パウエル 翻訳:酒井洋子 訳詞:岩谷時子 【帝劇公演(東京公演)】 2024年12月20日(金) 本初日~2025年2月7日(金) 千穐楽 ※プレビュー公演:2024年12月16日(月)~12月19日(木) 【2025年全国ツアー公演】 大阪公演:3月2日(日)~3月28日(金) 梅田芸術劇場 メインホール 福岡公演:4月6日(日)~4月30日(水) 博多座 長野公演:5月9日(金)~5月15日(木) まつもと市民芸術館 北海道公演:5月25日(日)~6月2日(月) 札幌文化芸術劇場 hitaru 群馬公演:6月12日(木)~6月16日(月) 高崎芸術劇場