トキ放鳥のモデル地区拡充 県が今年度「能登復興の象徴に」
●環境省選定の1枠目指し 国の特別天然記念物トキの放鳥受け入れに向け、県は宝達志水以北9市町に設けている「モデル地区」を拡充する。年度内に各市町と協議し、減農薬のコメ作りなどトキの生息環境を整える取り組みを行うエリアを増やす。環境省は早ければ来年度に放鳥地1カ所を選定する方針で、県は能登が選ばれ、放鳥が能登半島地震復興の象徴として実現することを目指して環境整備を加速する。 ●9市町と協議、エリア絞り込み 県によると、地震で被害を受けた9市町は、復旧復興と合わせて、放鳥に向けた環境整備も途切れることなく進めたいとの意向を示している。これを受け、県は創造的復興プランに「トキが舞う能登の実現・トキの定着に向けた餌場の整備」を掲げた。 トキは元来、水田を餌場とするなど人里近くで生息していた。被災地での水田復旧や里山再生は、トキの生育環境の拡大にもつながることから、モデル地区の横展開を進める。 2022年度に選定された9市町のモデル地区では、住民やボランティアの手で減農薬による稲作に加え、トキの餌となる水生生物が生息する魚道や江の整備、休耕田で水を張る「湛水(たんすい)」などが進められている。県は今後、各市町の意向や復旧状況も考慮し、拡大地域を選ぶ。 トキ放鳥を巡っては、島根県出雲市で6日に開催された会合で、環境省が早ければ2025年度に最初の放鳥地1カ所を決め、26年度に実施する方針を示した。候補地には能登9市町のほか出雲市も挙がっており、今年度と来年度の施策の進展が選定の鍵となる。 県民の意識醸成のため、県は子ども向けの絵本制作や、高校生による啓発活動の支援も進める予定。生活環境部の担当者は「被災者の復旧を最優先にしながらも、創造的復興につながるようトキ放鳥の実現を目指していく」と話した。