オーストラリアがパリオリンピック開幕戦でスペインを撃破、17得点8アシストのジョシュ・ギディー「チーム全員でつかんだ勝利だ」
力強いボールプッシュでチームに流れを呼び込む
パリオリンピックのバスケットボール競技の開幕戦はオーストラリアとスペインの一戦だった。世界の強豪でありながら昨年のワールドカップで決勝トーナメント進出を逃した両チームは、威信を懸けてこの大会に臨む。グループAは他にカナダとギリシャがいる『死のグループ』で、この初戦での勝敗は大きな意味を持つ。 そういった背景から両チームともティップオフから攻守のインテンシティが高く、果敢に仕掛ける出だしとなったが、その明暗ははっきりと分かれた。スペインが序盤からファウルがかさんだ一方で、激しくは行くがファウルにならない線引きができているオーストラリアは、激しさを押し出していくジョック・ランデール、それを的確なポジション取りとプレー選択で確実にサポートするニック・ケイのインサイド陣のバランスの良さが光る。 こうして生まれたオーストラリア優位の流れに勢いを与えたのがポイントガードのジョシュ・ギディーだった。ファウル連発でフラストレーションを溜めるスペインをトランジションで急襲する。力強いボールプッシュから、チームメートのタイミングの良いカットを見逃さずにパスを送り、イージーシュートのチャンスを作り出す。 スペインは立ち直りたいところでウスマン・ガルーパが接触プレーのあったジョシュ・グリーンを押し、小競り合いに発展。アンスポーツマンライクファウルはガルーパだけでなく割って入ったオーストラリアの選手にも宣告されたのだが、オーストラリアがすぐプレーに集中し直したのに対し、スペインは良い得点が決まってもファウルをもらえないことに苛立ちを露わにするなど意識がジャッジに向いてしまった。 前半を終えて42-49と出遅れたスペインは、第3クォーターに入って立ち直る。オーストラリアのカットプレーに対応してイージーレイアップを許さなくなり、オフェンスではサンティ・アルダマとベンチから出たセルヒオ・リュリのシュートタッチが好調で、彼らの3ポイントシュート連発で一気に差を詰めた。アルダマのフリースロー3本成功、アレックス・アブリネスの3ポイントシュート、そして絶好調のアルダマの3ポイントシュートと9連続得点で、第3クォーター残り6分にスペインが56-54と逆転に成功した。 しかし、ここでオーストラリアはスペインに合わせるようにディフェンスの強度を上げる。ここから第3クォーター終了までの6分間、相手のパスワークに完璧なローテーションでズレを作らせず、ゴール下でも粘り強く守り、リバウンドまで取りきり、アルダマのシュートタッチを狂わせるためにあえて際どくチェックに行ったものを含むフリースローでの4のみに失点を抑えた。そして攻めに転じればランデール、パティ・ミルズ、将来のエース候補ダイソン・ダニエルズと決めるべき選手がシュートを決め、15-4のランで69-60として第3クォーターを終えた。 こうなるとスペインは冷静な試合運びができない。リュリとアルダマのシュートは決まり続けていたが、ポイントガードのロレンツォ・ブラウンがディフェンスを崩すきっかけを作り出せず、一人での打開にこだわってボールが動かずに攻撃が停滞。それとは対照的にオーストラリアはギディーを中心に人もボールもよく走るバスケを展開し、リバウンドでもルーズボールでも気迫で上回った。 残り44秒、アルダマのこの試合6本目の3ポイントシュート成功で6点差まで詰め寄るも、ミルズがすぐさま3ポイントシュートを決め返して勝敗は決した。最後にもう一度スペインを突き放したオーストラリアが、最終スコア92-80で快勝を収めた。 オーストラリアのフィールドゴール成功は34本。このうち25にアシストが付いた。出場した10選手のうち8選手がアシストを記録。最多はギディーの8で、ターンオーバー5つを喫してはいるものの、速いテンポを作り出して自分たちのペースで試合を進める流れを作り出した功績は、ミスよりもずっと大きい。ギディーは試合後、「チーム全員でつかんだ勝利だ。こういう試合は1人では勝てない。全員が勝つために努力する必要があって、それができた試合だった」と語る。