阪神ドラフト2位指名の履正社・井上広大が抱く「巨人岡本型の4番構想」
「ホームランバッターになりたい。通算何本というより、1年、1年、40本以上は必ず打ちたいし、ホームラン王を取りたい。小中高とずっと4番を打ってきた。4番へのこだわりもある。最終的には4番を打てるようになりたい」 大きい夢をハッキリと口にできるところも井上の強みだろう。 プロで対戦したいピッチャーとして巨人の菅野の名前を挙げたが、ヤクルトに入った奥川を強くライバルとして意識している。決勝戦で、奥川からは3ランを放ったが、その他の打席では3三振だった。 「ホームランを打っているが、その他は抑えられた。チームは優勝したが悔しかった。プロでリベンジ、対戦して勝ちたいなという気持ちがある」 ライバル心をちらつかせた。 だが、すぐに1軍で活躍できるほどプロが甘い世界でないことは自覚している。 「バッティング以外の守備、走塁もレベルアップしなければならない。守備では一歩目の判断ができていない。ここで終わりじゃなく、ここがスタート。一軍にいつデビューするかよりも、どれだけ長く試合に出られるかが勝負。しっかりと土台作りをして一軍の舞台に立ちたい」 母の貴美さんに女手ひとつで育てられた。母の作ったハンバーグが一番の好物。かつて中日、阪神監督だった星野仙一氏は、自らの境遇に重ねて、「お母さん一人で苦労して育てたような厳しい家庭環境の選手は強い。そういう選手はドラフト候補として要注意せよ」と、スカウトに命じていた。井上にはプロで成功するための無形の強さがある。 矢野監督もドラフト総括の中で井上について触れ「右打者の大砲が欲しかったからね。夏の甲子園で見た打撃は、それに値すると思う。肩もいいと聞いている。中心打者になれる素材だ」と絶賛。 ヤクルトのスカウト時代に数多くの逸材を発掘してきた片岡宏雄氏も、「井上は巨人の岡本、ヤクルトの村上級の素材。右のスラッガーは、なかなか出てこない。中日に1位指名された石川を柔とすれば井上は剛だろう。しかし、何が何でも引っ張りというバッティングではない。変化球や揺さぶりへの対応が不安視されているのだろうが、私は打席数を踏ませることで対応力を身につけていくことのできるタイプだと踏んでいる」と高い評価を与えている。 阪神で右打者のホームラン王となると田淵幸一氏の1975年まで遡らなければならない。井上は、田淵氏の偉業を知らなかったが、待望の右のアーチスト誕生へ期待は高まる。