「赤」か「黒」か 血痕をめぐって主張を対立 最大の争点「5点の衣類」【袴田事件再審公判・結審】
静岡放送
袴田巖さんの再審公判で弁護側、検察側は犯行着衣に付着した血痕をめぐって主張を対立させてきました。最大の争点はみそに漬かった血痕は「赤か、黒か」です。 【写真を見る】「赤」か「黒」か 血痕をめぐって主張を対立 最大の争点「5点の衣類」【袴田事件再審公判・結審】 袴田さんの再審=裁判のやり直しで最大の争点となっていたのが犯行着衣とされる「5点の衣類」です。「5点の衣類」とは事件発生から1年2か月後、現場近くのみそタンクの中から見つかったもので、袴田さんの死刑判決の決め手となりました。 再審を求めた弁護団はこの「5点の衣類」は「捜査機関によってねつ造されたものだ」と主張しました。その大きな根拠としたのが血痕の色です。 「1年以上もみそに漬かった血痕は黒くなるはずで『5点の衣類』の血痕は赤すぎる」として捜査機関が発見直前にみそタンクの中に入れたと主張したのです。 弁護団は、長期間みそ漬けされた血痕が黒くなることを科学的に証明するため、法医学者に実験を依頼。奥田助教らは、みそと同じ環境下であれば血液は短期間でも黒くなるという実験結果を裁判所に提出しました。 <旭川医科大学 奥田勝博助教授> 「みそのような弱い酸や、高い塩分濃度だと、赤みの成分であるヘモグロビンが、ゆっくりと、酸化、変性、分解をしていく」 この実験結果が決め手となり、2023年3月、東京高裁は袴田さんの再審開始を認めました。 再審でも再び「5点の衣類」の血痕の色が最大の争点となりました。検察は新しい証拠として7人の専門家が作成した共同鑑定書を提出。弁護側の実験を批判し「赤みが残る可能性は否定できない」としました。 共同鑑定書を作成し、検察側の証人として法廷にも立った法医学者の神田芳郎教授です。 <久留米大学 神田芳郎教授> 「弁護側の実験というものは(みそと同じ程度に)単にpHと塩分濃度をあわせただけですから、この実験をもって100%1年2か月間みそ漬けした血痕に赤みが残ることがないと証明することは私は絶対にできないと思います」 神田教授は、血痕の赤みが残るかどうかを確かめるためには、pHと塩分濃度だけでなく「酸素濃度」を考慮する必要があると指摘。1年2か月間「5点の衣類」があったとされるみそタンクの底は酸素濃度が著しく低く、それにより血液の赤みが残る可能性はあると主張します。