水素はまだ「未来のエンジンの燃料」になり得る 自動車がもっと面白くなるかもしれない
自動車の動力源はまだ確定していない
アルピーヌは5月のスパ・フランコルシャン6時間耐久レースで「アルペングロー」のプロトタイプを展示し、代替パワートレインというテーマについて結論がまだ出ていないことを証明した。 【写真】「水素燃焼エンジン」搭載! 未来のハイパーカー【アルピーヌ・アルペングローHy4を写真で見る】 (19枚) その直後にマツダ、スバル、トヨタが発表した、電気駆動ユニットを統合し、カーボンニュートラル燃料や水素と互換性のある新しい小型内燃エンジンの設計に共同で取り組むという計画も同様だ。 いかに世界がBEV技術に心を奪われているとはいえ、100年以上にわたって世界経済全体を支えてきた化石燃料からの脱却は、まだ初期段階にある。 近いうちに方向性が定まる可能性は低く、最終的に物事がどう転ぶかは、政治的な決定よりもむしろ、個々の技術の実現可能性、手頃な価格、魅力、有効性によって決まる。そして、2050年のような無作為に選ばれた日付は遠い先のことのように思えるかもしれないが、世界が直面している変化の規模を考えれば、来週の話と同じかもしれない。 唯一期待できるのは、陸・海・空の輸送部門全体が持続可能なエネルギーに向かっているということだ。自動車業界では、BMW、ステランティス、トヨタ、ホンダなどのメーカーが水素燃焼エンジンに取り組んでいる。 商用車の分野も投資が進み、JCB、MAN、ボルボ・トラックなどが参入している。 同様に、水素と酸素を電気に変換する水素燃料電池もまだ開発途上だ これらの技術は見事に重なり合っている。燃料電池車(FCEV)は水素貯蔵システム(高圧タンク)を水素燃焼エンジン車と共有し、また電動ドライブトレインをBEVと共有している。 エンジニアや科学者は、それぞれの専門分野によってどちらが最善かを議論しており、意見はかなり異なる。 FCEV推進派は、EVの問題点はバッテリー充電のために長時間停車する必要があることだと主張する。その点、水素タンクはガソリン車やディーゼル車の燃料タンクとほぼ同じ速さで充填できる。 BEV推進派は、電気を作り、それを水素に変換し、流通や小売のためにエネルギーを使って圧縮・減圧することは、電気を作って直接バッテリーに貯蔵することに比べて意味がないと主張する。 FCEV陣営は、CO2排出ゼロ、持続可能性、手頃な価格という結果が得られるのであれば、そこは問題ではないと主張するかもしれない。 水素の製造は、オフピーク時に発電されたグリーン電力を「ガスバッテリー」として貯蔵する方法でもある。 グリーン電力を使って水素を製造し、そこから液体合成燃料を作ることも可能性の幅を広げている。そのため、あらゆる分野のメーカーが選択肢を探っているようだ。 化石燃料を使った内燃機関の時代は終わりを告げようとしているかもしれないが、自動車愛好家にとって見通しはそれほど暗くはない。未来のクルマがどのような方法で、何を動力源とするかは、まだ確定していない。これまで以上に複雑で興味深いものになり、より多くの選択肢から選べるようになるかもしれない。
ジェシ・クロス(執筆) 林汰久也(翻訳)