6年目でも動的能力は「最高水準」 ジャガー Iペイスへ試乗 英国初の量産BEV 生産終了を惜しむ
2024年内に生産を終えるBEV:Iペイス
ジャガーがIペイスを発売したのは、2018年。先駆けて発表されたスイス・ジュネーブ・モーターショーでは、成功を期待させる大きな話題を呼んだ。少なくない英国人が、誇りに思ったことだろう。 【写真】6年目でも動的能力は「最高水準」 ジャガー Iペイス 生産終了に至ったFタイプにXF、XEも (127枚) 英国初の量産バッテリーEVとして、存在意義は大きい。1959年のモーリス・ミニや、1970年のレンジローバーと同様に。ドイツ・ブランドに対し先手を打った、珍しい例でもあった。当時の上層部も、その点を高く評価していた。 高めの全高と短いフロントノーズにも関わらず、イアン・カラム氏率いるチームは、ジャガーらしいスタイリングを創出。極端に寝かされたフロントガラスに抑揚の効いた面構成で、洗練された雰囲気を得ている。 それでいて、車内空間は広々。沢山の荷物も詰める。しっかり実用性も備わる。 Iペイスの見た目や乗り心地を、メディアは褒め称えた。金融関係者は、ジャガーが収益性の高い未来へ歩みを進めたと判断した。創業者の故ウィリアム・ライオンズ氏も、それを聞いたら喜んだに違いない。 世界的な受賞数も凄い。欧州カー・オブ・ザ・イヤーを含む、62の賞をこれまでにさらっている。 技術進歩に合わせ、3年毎に細かな改良を重ねつつ、2世代は続くことが想定されていたようだ。2021年にジャガー・ランドローバーのCEOへ就任したティエリー・ボロレ氏も、近未来のロードマップにIペイスを加えていた。 2025年までに、ジャガーはバッテリーEVへ特化したブランドになる。ところが、2024年内にIペイスの生産は終了を迎える。
優れた評価にも関わらず、伸び悩んだ販売
この事実を筆者が聞いた時、ショックを受けたことは間違いない。だが、さほど大きな驚きでもなかった。英国の自動車業界は、激動と呼べる歴史を繰り返してきたからだ。 それでも、もう一度乗ってみたいという気持ちが生まれた。ジャガーへ問い合わせると、試乗車がまだあるという。素晴らしい状態の1台を、10日間ほどお借りすることにした。 振り返れば、Iペイスの終了は簡単に予想できたことかもしれない。ボロレがCOEの座を退き、財務担当取締役だったエイドリアン・マーデル氏へ交代した時点で、収益性を強化するという姿勢は明確に現れていた。 Iペイスは、内燃エンジンで走るEペイスとともに、オーストリアのマグナ・シュタイアー社によって生産されている。その契約は、かなり高額なものだった。駆動用バッテリーは、ポーランドから輸入されている。駆動用モーターは、自社製だったが。 優れた評価にも関わらず、販売は伸び悩んだ。2019年と2020年には、欧州と北米で合計1万5000台ほどが売れているが、前年はその3割程度へ減少している。お高めな英国価格だけでなく、しばしば報告されたソフトウェアの不具合も影響しているだろう。 航続距離も、カタログ上では469kmが主張されたが、実際はその70%ほど。中国や韓国からは、安価なバッテリーEVもグレートブリテン島へなだれ込んできた。ドイツ・ブランドも、次々に新モデルを投入してきた。