エコと安全は両立しない? 過熱する燃費競争で重視される「エコタイヤ」とは
自動車の世界は今や何でもエコ。EVやハイブリッド、小排気量ターボにディーゼルと自動車メーカーの持てる能力を結集して省燃費化競争にしのぎを削っている。 最新のパワープラントを積んで軽量ボディを使って、血のにじむ思いで省エネルギー競争にまい進しても、装着するタイヤのエコ性能が低ければ全てが帳消しになってしまいかねない。燃費競争の中でタイヤは最も影響が大きいパートのひとつだ。
燃費競争への影響が大きいタイヤ
だから、自動車メーカーはタイヤメーカーに無理難題を押しつけてでもより良い低転がり抵抗タイヤを作らせる。新車に装着されているタイヤの多くはその車種の専用開発品で、市販のタイヤと一見同じように見えるものでも、ゴムの質や構造が違う特別仕様となっていることが多い。より高い省燃費性能のタイヤを1円でも安く納入させるためには、仕様を事細かに調整する必要があるのだ。 そこまでするのは、エコカー販売の最前線、営業現場では、カタログ上の燃費でライバルに勝っていることが確実に売り易さにつながるからだ。それはそのまま販売台数に返ってくる。プリウス&アクアvsフィットの戦いなど、最早燃費戦争だ。命がけでライバルより良い燃費を叩きださないと、生き残れない。それはクルマもだが、設計チームのエンジニアとしての人生が決まりかねない。その戦争において、タイヤは決戦兵器のひとつなのだ。 そんなわけで、トップエンドのスポーツタイヤを除けば、もはや世の中には「エコなんか知るか!」というタイヤはほぼ無くなった。みんな仲良くエコタイヤだ。ただしその性能が全部同じかと言うとそんなことはない。 ものすごく乱暴に言うと、タイヤをエコにすると、濡れた路面でのグリップ性能が落ちる。極論を言えばエコと安全が天秤にかかっている状態と言うこともできる。 そのバランスをどのくらいにするかには、自動車メーカーとタイヤメーカーそれぞれの見識に任されている。しかも前述の通り燃費戦争での必勝が義務付けられている。ライバルに勝つために禁断の領域に踏み込めば「雨の日にブレーキが効かない」という恐ろしい事態を生む。今回はエコタイヤについて考えてみたい。