エコと安全は両立しない? 過熱する燃費競争で重視される「エコタイヤ」とは
ユーザーの選択、技術者の選択
では我々はどうしたらいいのだろうか? 選択肢はふたつある。ひとつはエコタイヤを諦めること。冒頭で書いた通り、様々な性能が並び立たないのだとしたら、環境とお金の問題である燃費より、人命に直接関わるグリップ性能を優先するという考え方だ。しかし、2014年の今、もうそうしたくても選べるタイヤが限られている。タイヤサイズによってはエコタイヤ以外に選択肢が皆無ということもあるのだ。 もうひとつの方法は、できる限り新しい世代のエコタイヤを選ぶことだ。前述の通り、基礎研究は継続的に続けられているので、新しいほど問題点が解決されている可能性が高い。もちろん新製品は安くない。ここでもお金による解決になる可能性が高い。 継続的社会を維持するためにも、エコが大事でないとは言わない。しかし、自動車のタイヤは1本あたりせいぜいハガキ一枚分の接触面でクルマの全てを支えているのだ。エコタイヤの一部には安全性とエコ性能のバランスがあまりにもエコ寄り過ぎるのではないかと思う製品もある。 特に自動車メーカーから無理難題を押し付けられている新車装着のタイヤにはそれが多いように思う。しかも新車装着のタイヤはユーザーに全く選択権がない。どうしても嫌なら新車装着のタイヤを捨てて、別のタイヤを買わなくてはならない。そこまでする人はいないだろう。 モノづくりに携わる人はそれを使う人たちの幸せを最優先にしてもらいたい。エコは大切だ。本当に環境のために適切な商品開発をしているなら称賛を贈りたい。しかし1台でも多く売るという経済原則の前で、ユーザーの幸せを最優先にし続けることは難しい。つい安全とエコを乗せた天秤のバランスが一方へ傾くことになる。それでも、自動車王国ニッポンを支えるメーカーとして、ひとりの日本人技術者として、常に迷いなく胸の張れるモノづくりを目指してもらいたいと切に望むのだ。 (池田直渡・モータージャーナル)